弁護士保険コラム Column

【事業者向け】コロナ禍における法的トラブル

【事業者向け】コロナ禍における法的トラブル

コロナ禍における法的トラブルの変遷

まずは、コロナ禍で法的トラブルがどのように変遷していったか、企業や経営者の方から寄せられる相談内容を元に見ていきましょう。

流行初期段階(2月~3月)の法的トラブル

① 感染予防に関する相談

  • 従業員のためにどのような感染予防対策をすべきか
  • 顧客や取引先のために感染予防対策をすべきか
  • 感染拡大防止のためにイベントを中止すべきか

② 取引停止に関する相談

  • 中国から部材が送られてこないため、納品が遅滞した
  • イベント中止による料金は返金すべきか

 

緊急事態宣言中(4月~5月)の法的トラブル

① 減給に関する相談

  • 会社は休みにしたが、従業員に対する給料は支払うべきか
  • 咳が出ている従業員に自宅待機命令を命じたが、給料を支払うべきか

② 不動産に関する相談

  • 管理物件でコロナが発生したが、他の居住者に周知すべきか
  • 家賃の値下げ要求に応じなければならないのか

 

緊急事態明け(6月~7月)の法的トラブル

① 解雇・内定取消に関する相談

  • コロナの影響で店舗を閉鎖したが、従業員を解雇できるのか
  • コロナの影響を理由とする内定取消は認められるか

② 債権回収に関する相談

  • 取引先がコロナによる業績不振を理由に、代金を支払わない。どのように対応すべきか

 

WITHコロナ(8月~9月)の法的トラブル

① 解雇に関する相談

  • 数か月前に解雇や内定取消をした者に代理人弁護士が就き、解雇無効を求める文書を送付してきた。どのように対応すればよいか

② 倒産に関する相談

  • 取引先が倒産して、破産管財人から書面が届いた。どのように対応すればよいか
  • コロナの影響でいよいよ事業を続けることが難しくなってしまった。倒産を検討しているが、どのように進めればよいか。

 

コロナ禍の法的トラブル事例

つづいて、実際の事例を元に、いくつかのトラブルを詳しく見ていきましょう。

解雇トラブル

事例

  • ある飲食店で、複数の店舗のうち1店舗を残し、他の店舗は閉鎖することになった。
  • 閉鎖する店舗の従業員に辞めてもらったところ、解雇無効と残業代請求をされた。
  • 裁判外交渉で相手方は多額の金銭を請求したため、労働審判に移行。

※店を閉鎖するからといって、必ずしも解雇が有効になるわけではない。

結果

  • コロナ禍だからといって、解雇の要件を満たさない解雇は無効である。
  • 残業代についても、みなし残業代に関する合意が無く、支払い義務あり。
  • ただし、様々な主張と交渉の末、金額を半額近くまで下がることができた。

学ぶべき点

  • 元々、労働法は、労働者を保護するもので、会社側には非常に厳しい。
  • コロナ禍だからといって、裁判になった場合に会社側に厳しいスタンスは変わらない。
  • 裁判にならずに纏めることが重要。

→本件でも合意退職書を作成すれば、数百万円支払わずに済んだ。

内定取消トラブル

事例

  • ある会社が二人を雇うことにしたが、コロナの影響で二人とも内定取り消し。
  • 1名は法的はまだ「内々定」と評価できる状態。
    →交渉の末、一定の解決金を支払うことで解決。
  • もう1名は法的にすでに「内定」であり、内定取消は解雇と同じくらい難しい状態。
    →交渉決裂。

学ぶべき点

  • 元々、労働法は、労働者を保護するもので、会社側には非常に厳しい。
  • コロナ禍だからといって、裁判になった場合に会社側に厳しいスタンスは変わらない。
  • 法律知識の重要性。
    →内定ではなく、内々定に留めておけば結論は変わりうる。

 

倒産トラブル

事例

  • ある会社が今年の3月以後、コロナの影響で著しく業績不振になった。
  • コロナ禍のもと破産することを決意するが、弁護士ではなく怪しいコンサルに相談。
  • コンサルの指導の下、破産法上問題のある行動を行ってしまったため、免責されない可能性がある。

学ぶべき点

  • 倒産すれば、必ず責任を免れることができる(免責できる)というのは間違い。
  • 免責決定を受けるためには、適切な方法で。破産の準備を行う必要がある。
  • そのためにはできるだけ早い段階で弁護士に相談する必要がある。

 

総括

「未知の事態こそ法律知識が重要となる」

新型コロナウィルスへの対応という今まで誰も予想しなかった問題が発生しています。ただ、未知の事態だからといって「コロナだから許される」と思ってはいけません。安易に取った行動がのちに争われるケースが非常に増えています。未知の事態にこそ、適切な手続き、適切な証拠の残し方が重要となります。

               

この記事の監修または執筆弁護士

香川 希理

弁護士

香川総合法律事務所代表弁護士。
明治大学法学部、立教大学大学院法務研究科卒業後、2010年弁護士登録(東京弁護士会)、2013年香川総合法律事務所設立。企業法務を専門とし、上場企業から中小企業まで多種多様な企業の顧問をしている。主な役職としては、東京弁護士会マンション管理法律研究部、公益財団法人澤田経営道場企業法務講師など。主な著書としては「悪質クレーマー・反社会的勢力対応実務マニュアル」(民事法研究会)、「マンション管理の法律実務」(学陽書房)、「中小企業のための改正民法の使い方」(秀和システム)など。

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