【解説】弁護士保険
【解説】弁護士保険
(弁護士費用保険・権利保護保険)
弁護士保険とは何か?どんな人におすすめ?
【要点】弁護士保険とは、法的トラブルが起きた際に弁護士費用を補償し、早期相談・早期解決を可能にする保険です。裁判に限らず、法律相談や示談交渉など初期段階から利用できる点が特徴です。
弁護士費用を補償する保険としては、自動車保険の特約(弁護士特約)として販売される例が多いですが、ここでいう弁護士保険はオプションのような特約ではなく、弁護士費用の支払いに特化した単独型の保険です。
単独型の弁護士保険では、近隣とのトラブル、離婚や相続に関する問題、パワハラや賃金未払いなどの労働問題、取引先や従業員との労務問題など、個人にも事業者にも起こりうるさまざまな民事上のトラブルに対応できますので、個人・事業者を問わず法的トラブルに備えたいすべての人におすすめの保険です。
弁護士費用を補償する保険は、海外、特にヨーロッパ等で既に広く普及している保険ですが、日本国内では2000年10月に損害保険会社2社より販売を開始した「弁護士費用特約」がその始まりで、単独型の商品は2013年に発売されました。わが国では比較的まだ若い分野の保険といえます。
弁護士保険で何ができるの?
- 気軽に弁護士への法律相談ができる
- 弁護士費用の経済的負担を軽減できる
- 早期相談によりトラブルの深刻化を防げる
弁護士保険が必要とされる理由は?
- 契約社会化の進行
- SNS・口コミによる紛争リスクの増大
- 個人の権利意識の高まり傾向
弁護士特約とは何が違う?
【要点】単独型の弁護士保険は弁護士特約に比べると保険料はやや高めですが、トラブルの補償種類が幅広いため、さまざまなトラブルに対しても対応できます。
弁護士特約は、一般的に損害保険会社の販売する、自動車保険や火災保険などの特約(オプション)として、主に事故に起因するトラブルが起きた際の弁護士への相談料や、交渉を依頼する際に必要な弁護士費用を保険会社が支払う保険です。
一方で単独型の弁護士保険は、事故以外でも民事上の法的トラブルを解決するために必要となる
弁護士費用を補償する保険です。広義の意味で「権利保護保険」といい、一般的には「弁護士保険」「弁護士費用保険」などの名称で認知されつつあります。
弁護士保険と弁護士特約の大きな違いは、自分が加害者になって相手に迷惑をかけたときばかりでなく、他人から被害を受けた場合に相手に損害賠償を請求するなどの場合にも利用できます。
契約上のトラブル、権利や利益の侵害、紛争の解決など、法的トラブルを幅広く対象としていますので、例えば、パワハラを受けて体調を崩してしまったので会社に損害賠償請求をしたい場合や、相続財産について兄弟姉妹と争う事になってしまった場合など、自己の権利を守るための弁護士費用を保険でカバーできます。
| 一般的な弁護士特約 | 弁護士保険 | |
|---|---|---|
| 保険契約の形態 | 損害保険に付加する特約(自動車保険、日常生活型・賠償責任保険に付加するものを含む) | 単独型 |
| 補償されるトラブル | 偶発事故、一部の民事トラブル | 偶発事故、近隣・労働・消費者トラブル、離婚・相続・その他一般トラブル全般 |
| 保険金請求時の要件 | 公的機関への通報や届け出が必要 | 発生の事実や意見の相違 |
| 保険利用のタイミング | 損害賠償を請求する法的権利が明確なとき | 法的トラブルに遭遇したとき |
| 無料弁護士相談サービス | なし(一部条件付きで実施) | あり |
| 法律文書チェックサービス | なし | あり |
弁護士保険は裁判にならないと使えない?
いいえ。弁護士への法律相談、内容証明郵便への対応、示談交渉、調停など、裁判にまで至らないトラブルでも補償対象になります。
弁護士保険は入ったらすぐ使える?
保険の開始日からすぐに補償が開始されるのは自動車事故等の「特定偶発事故」のみです。
その他の一般事件は補償開始日から3か月間の待機期間後からの補償となります。
さらに、親族関係に係るトラブル・相続トラブル・離婚トラブルは待機期間より長い不担保期間が設定されています。
弁護士保険は意味がない?
弁護士保険は、トラブルが起きなければ使わない点では保険らしい商品ですが、いざという時の初動対応を支える点に大きな価値があります。
個人型弁護士保険で補償対象となる主なトラブル
【要点】離婚、ハラスメント、遺産相続紛争、近隣の迷惑行為、ネットトラブル、不当解雇や賃金不払いなどの労働トラブル、損害賠償請求といった個人が直面するトラブル全般が補償対象です。
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 特定偶発事故 |
● 道路交通事故 自動車事故・自転車事故・歩行中の車両との事故 ● 偶発人身傷害事故 急激かつ偶然な外来の原因により生じた不慮の人身事故 |
| 一般的なトラブル |
● 労働トラブル パワハラ、セクハラ、不当解雇、残業代や賃金の未払いなど ● 近隣トラブル 騒音、悪臭、その他の迷惑行為 ● 離婚トラブル 相手の不貞行為やDV、その他離婚トラブル ● 相続トラブル 遺産相続、遺言書のトラブルなど ● ネットトラブル SNSでの誹謗中傷、迷惑行為など ● その他の民事トラブル 消費者トラブル、損害賠償請求など |
弁護士保険が使えないケースは?
【要点】さまざまな法的トラブルで弁護士費用を補償する弁護士保険ですが、状況によっては補償が使えない場合があります。弁護士保険で補償されない主なケースを紹介します。
加入前のトラブル
弁護士保険への加入前から発生しているトラブルは、補償の対象になりません。
※補償されるかどうかの判断は、弁護士を利用したタイミングではなく、原則として法的トラブルの原因となる事実(原因事実)が発生した時点となります。ご自身での判断が難しい場合には、保険会社に連絡してください。
故意・犯罪行為
故意で行った行為や犯罪行為、その他弁護士保険約款に定められた項目は、弁護士保険が使えません。
5万円未満の紛争
相手に請求する金額、または、相手に請求される額が5万円未満のトラブル
一般的な弁護士費用の内訳
【要点】弁護士費用は一律ではなく、案件の内容・難易度・対応範囲などによって異なります。 ただし、多くのケースで費用は「相談料」「着手金」「報酬金」「その他の費用」の4つで構成されています。
相談料弁護士に正式依頼する前の法律相談にかかる費用
相場は30分〜60分あたり5,000円〜10,000円程度で、地域や弁護士事務所、電話・対面・オンライン相談などの形式によっても異なります。
※現在は「初回相談無料」を採用する法律事務所も増えていますが、原則は有料と考えるのが無難です。
着手金事件を正式に依頼する際、結果に関わらず発生する費用
弁護士に依頼する時点で支払い、途中で解決・敗訴しても原則返金されません。
また、トラブルの種類や請求額に応じて金額が変動します。
報酬金事件が解決した場合に、その成果に応じて支払う費用
勝訴・和解・有利な解決などで紛争が終了した際に、得られた経済的利益の一定割合を弁護士から請求されます。なお、全面敗訴などで成果が出なかった場合は、請求されないケースもあります。
その他の費用弁護士が事件処理のために実際に支出した費用
裁判所に納める印紙代、郵送費、交通費、証明書取得費用 などがかかります。
金額は比較的少額ですが、案件によっては積み重なることがあります。
弁護士保険を選ぶ際のポイント
【要点】弁護士保険は個人に向けた「個人型弁護士保険」と、事業者(副業を含む)に向けた「事業型弁護士保険」の2種類があります。商品の型ごとに補償されるトラブルが異なるため、加入時には注意が必要です。
さらに、弁護士保険を選ぶ際に重要なのは ①補償対象のトラブル②保険金のてん補割合 ③保険料 ④付帯サービスの内容 の4点です。
- 1.補償対象のトラブル
- 交通事故などの偶発的な事故以外にも、労働トラブルなどの一般的なトラブルが補償対象になっているか
- 2.保険金のてん補割合
- 基準額に対して何%の割合で保険金が支払われるのか
- 3.保険料
- 自分にあった保険料なのか、また、変更はできるのか
- 4.付帯サービスの内容
- 無料弁護士相談でも弁護士にしっかりと相談できるのか
弁護士保険は「使う保険」ではなく「備える保険」
【要点】弁護士保険は保険という特性上、加入前に既に発生している原因によるトラブルの補償はできません。これは弁護士保険に限らず、すべての保険に共通する原則によるものです。トラブルが顕在化してから加入しても補償されないため、「困ってから入る」のではなく「困る前に備える」ことが前提となります。
トラブルが発生するとどうなるの?
法的トラブルは、弁護士費用といった金銭的負担だけでなく、次のような精神的・時間的負担を同時に伴います。
- 相手方とのやり取りによる強いストレス
- 「何をすべきか分からない」という不安
- 本業や日常生活への集中力低下
- 周囲への相談しづらさによる孤立感
特に初めて法的トラブルに直面した場合、判断を誤りやすい初動段階で、誰にも相談できない状態に陥ることが少なくありません。
まとめ
弁護士保険は、法的トラブルに直面した際の弁護士費用を補償し、早期相談によって問題の深刻化を防ぐための保険です。 早期相談が可能になることで、金銭的・精神的負担を大きく軽減できます。
