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NFTとは?アートNFTにおいて起こりうる著作権の問題

NFTとは?アートNFTにおいて起こりうる著作権の問題

NFTは、アートのような芸術作品、スポーツ、芸能、ゲーム、ファッションを始めとする、幅広い分野で目覚ましい発展を遂げています。
今回は、そもそもNFTとはどのようなものか、またアート作品(アートNFT)で起こりうる著作権の問題をみていきます。

「NFT」とは

トークン(token)という英単語の意味としては、象徴、記号、証拠、前兆、貨幣といった意味があります。暗号資産、仮想通貨が出回るようになってからは、それらデジタルマネーを指します。

ブロックチェーンは、ブロック(かたまり)ごとにデータを管理し、それをチェーン(鎖)のようにつなげ保管する技術、正確な取引履歴を維持しようとする技術です。デジタル台帳と呼ぶことができます。

ビットコインなど、ブロックチェーン上で発行されるトークンは、代替性トークンと言われ、多数存在します。
一方でNFTは、一般にブロックチェーン上で発行されるトークンのうち、トークン自体に固有の値や属性をもたせた非代替性トークン(Non-Fungible Token)をいいます。

「アート」と「NFT」で考えると、アーティストはアート作品をNFT化(アップロードするなどし、NFTを発行)し、購入者がしかるべき方法で決済(暗号資産等での支払い)をすることで、そのアートNFTを購入(ブロックチェーン上でNFTを移転)することができます。
NFTは、プラットフォーム事業者が展開するマーケットプレイスという場で購入することができます。
なお、NFTに限らずブロックチェーン上で取引などをおこなった際には、手数料(いわゆるガス代)がかかることがあります。

アートNFTにおいて起こりうる著作権の問題

そもそも日本法では「NFT」の定義が存在しません。NFTがマーケットプレイスの場でどのように扱われるかは、そのマーケットプレイスの利用規約によりますが、アートNFTの保有がNFTアートの著作権を保有するものではない、といった記載が見られます。
これは、NFT保有者は利用規約等に基づきアート作品を一定の範囲で利用することはできますが、著作権まで譲渡されるものではない、という意味であると解せます。この点は、物理的に存在する絵画の所有権を譲渡した場合と同様です。ただし、NFTは物権的な所有権の対象となる「物」ではなく、現状はあくまでも債権的な契約にすぎません。

では、アート作品の著作権を例にいくつかの事例を検討してみましょう。

<前提>プラットフォームの利用規約で、NFT保有者は、アート作品をコピーして商品化することができる旨の規定があり、利用範囲・条件の範囲で、利用することができる。

上記①②の順番で事案が発生した場合、Bは引き続きアート作品をコピーして商品化することができるでしょうか。

②にて、Aが著作権のすべてをCに譲渡した場合、譲渡登録前に生じたAB間の取引は、プラットフォームの利用規約に基づきます。プラットフォーム外で著作権を譲り受けたCに当該利用規約の効力は及びません。
そして、著作権法第63条の2(利用権の当然対抗制度)により、②の著作権譲渡が行われた後も、それ以前に許諾を受けていたBは引き続きアート作品をコピーして商品化することができる(Bは、Cに利用権を対抗することができる)と解せます。

次に、①②の後に③が発生した場合、Dはどのようなリスクがあるでしょうか。

前述の「利用権の当然対抗制度」により、著作権譲渡登録(②)前に許諾されたBは保護されますが、著作権譲渡登録(②)後にNFTを購入したDは当然には保護されません。
プラットフォームの利用規約において、Aの著作権譲渡が禁止されている規定があるなどすれば、DはAに対して利用規約違反を追及できるかもしれません。

アート作品のデータは、公衆がアクセスできるウェブサーバー上にアップロードされているとした場合、AはBに対しどのような主張が可能でしょうか。

著作権は、利用態様ごとに具体的な権利が定められており、それら具体的な権利を支分権といいます。例えば、印刷物のコピー(複製権)や、ネット送信(公衆送信権)といったものです。
前述の通り、日本法(著作権法)では「NFT」の定義自体が存在しないため、他人の著作物を(今回の事案はBがAの作品を)NFT化することそれ自体(すなわち文字列の生成自体)に限れば、今のところ著作権侵害には当たらないといわれることがあります。
とはいえ、今日NFT作品の持つ意義は、基本的には利用権の設定にあると考えられますので、無断でのNFT取引は実質的には著作権侵害の問題を多分に孕むといえます。

また、今回のようにBが公衆がアクセスできるウェブサーバー上にアップロードした場合、複製権、公衆送信権の侵害となり得ます。それに加えて、公表されていなかった作品を公表した場合は、公表権、Aの氏名を表示した場合は、氏名表示権の侵害なども考えられます。



まとめ

以上より、一足飛びで解決できない問題もありますが、問題が発生した場合は、著作権法やプラットフォームの利用規約に基づく主張を行っていくことになります。いずれの立場であってもNFTに関与する場合は、それらの内容をしっかりと確認しましょう。

また、オリジナルの作品としてNFTで登録されているものの、人気キャラクターや別のゲームに酷似(コードを一部しか変えていない、結果として見た目がかなり酷似している)した作品が販売されている事例も存在して問題となっています。 別の作品との関係性で「影響を受ける」、「オマージュ」、「盗用」の明確な線引きは難しいようです。
アーティストを守るための法整備についてはさらなる検討が待たれるところです。

監修弁護士

松田 優 弁護士

弁護士

香川総合法律事務所勤務弁護士
東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了
東京弁護士会労働法制特別委員会、同法教育部会所属
重点業務は、企業法務(不動産・建築、IT・システム中心)、労働関連法、区分所有関連法(管理会社・管理組合中心)など。

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