美容医療、塾、結婚相談所といったところと契約をする際、皆さんはどのようなことに気をつけていますか。これらの契約はいずれも長期にわたり、高額なものが多いため、慎重に検討する必要があります。
ところが、口車にのせられて契約をしてしまった、効果があると言われた美容クリニックで施術をしたが、まったく効果が無かったので契約を解約したい、といった事例は少なからずあるようです。
パート1、パート2の二回にわたっての今回のコラム、パート1では「特定継続的役務提供」と指定されている7つのサービスとは何か、また消費者(顧客)側の権利を確認していきましょう。
目次
特定商取引法の規制対象となる「特定継続的役務提供」とは
◎「役務(えきむ)」とは、サービスのことです。
「特定継続的役務」とは、役務の提供を受ける者の身体の美化、知識・技能の向上などの目的を実現させることをもって誘引されるが、その目的の実現が確実でないという特徴を持つ有償の役務のことです。
「特定継続的役務提供」とは、一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価を受け取って特定継続的役務を提供することで、「特定商取引法」で規制されているサービス形態をいいます。
◎「特定継続的役務提供」として指定されているサービスは、以下の7つになります。
1.エステティックサロン
2.一定の美容医療
※脱毛、にきび・しみ・そばかす・ほくろ・刺青その他の皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化、皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減、脂肪の減少、歯牙の漂白といった美容を目的とするもので、主務省令に定められたものが対象になります。
3.語学教室
4.家庭教師
5.学習塾
※「家庭教師」及び「学習塾」には、幼稚園又は小学校に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。「学習塾」には、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりません(高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります。)。
6.パソコン教室
7.結婚相手紹介サービス
契約期間が、1.エステティックサロン、2.一定の美容医療は1ヶ月を超えるもの、それ以外は2ヶ月を超えるものであって、契約金額はいずれも入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など含めて総額が5万円を超えるものが対象になります。なお、役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も含まれます。
「特定継続的役務提供」における消費者側の権利
特定継続的役務提供の契約をした後に、消費者が契約を破棄したい、途中でやめたい、と思ったときはどのような方法が取り得るか、確認していきましょう。
1)クーリング・オフ制度
特定継続的役務提供では、消費者が契約を締結した場合でも、契約書面を受け取った日を1日目として、8日以内であれば、書面または電磁的方法(電子メールの送付等)により、無条件で契約の解除(クーリング・オフ)ができます。店舗での契約のほか、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売による契約もクーリング・オフの対象となります。関連商品に関しても同様です。
関連商品とは、サービス提供に際し消費者が購入する必要があるとして、事業者が販売する商品です。サービスによって政令で商品が指定されています。
具体的には、エステティック・美容医療では、健康食品・化粧品など、語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室では、書籍CD教材など、結婚相手紹介サービスでは、真珠・指輪その他装飾具などです。
2)解除(中途解約)
1)のクーリング・オフができる期間を経過した後でも、将来に向かって特定継続的役務提供等契約を解除(中途解約)することができます。その際、契約書面で違約金の支払いについて定めていたとしても、事業者が消費者に対して請求できる金額の上限は、特定商取引法および政令で定められています。定められた金額以上の額を事業者が既に受け取っている場合には、残額を消費者に返還しなければなりません。
事業者が消費者に対して請求し得る損害賠償などの額の上限は、契約の解除が役務提供を受ける前か後か、また「特定継続的役務提供」として指定されている7つのサービスごとに異なりますが、およそ1万1,000円から5万円の範囲になります。
消費者が権利を行使し得る事例紹介
◎結婚相手紹介業者との契約をクーリング・オフしたい
〔事例〕
・新聞の折り込み広告を見て、結婚相手紹介業者にパンフレットを貰いに行った。
・契約をするつもりはなかったが、強引に勧誘させられ、契約を結んでしまった。
・契約書にクーリング・オフをする場合でも「手続費用として別途10万円を請求する」との記載があった。
・契約をした翌日に内容証明郵便でクーリング・オフを申し出た。
〔対応方針について〕
上記事例では、契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフができるので、この方法で契約の解除は可能です。
また、クーリング・オフは契約の無条件撤回のため、クーリング・オフの行使を受けた事業者は違約金・手数料等の対価を請求することはできないことから、手続費用として10万円を請求されることはありません。
◎エステ及び関連商品のクーリング・オフ
〔事例〕
・エステティックの従業員に街頭で話しかけられ、興味本位でサロンで話を聞くことにした。
・機械で肌診断を行ったところ、従業員から「今から手を打っておいた方が良い」と言われ、高価な美顔エステと化粧品、サプリメントを組み合わせたコースを勧められた。
・生活に余裕がないことを理由に断ろうとしたが、執拗な勧誘が2時間も続いた。
・このままでは帰れないと思い、契約書にサインをしてしまった。
・化粧品もビタミン剤も未開封であり、施術に必要だと言われて買ったので関連商品としてクーリング・オフしたい。
〔対応方針について〕
上記事例では、エステという役務の提供に際して購入する必要のある商品の販売等が併せて行われました。
このような場合において、役務提供契約(美顔エステそのもの)に係るクーリング・オフはもちろん、役務提供にあたって購入が必要と言われて購入した商品で、上記事例では、化粧品、サプリメントの販売に係る契約についても併せてクーリング・オフが認められています。
◎パソコン教室の解約
〔事例〕
・パソコン教室で無料体験後「今なら受講料が通常より3割安い」と勧められたので、契約した。
・受講を開始して3ヶ月経過したが、指導内容が期待していたものと違い、授業の内容に不満なので、解約をしたいと申し出たら、違約金がかかると言われた。
〔対応方針について〕
上記事例では、クーリング・オフ期間が経過した後も、契約期間内であれば中途解約できます。ただし、パソコン教室側の言う通り、違約金は発生します。「授業の内容に不満である」、「成果に納得がいかない」など、中途解約は、理由が何であれ、契約を途中で解消できる制度です。
違約金に関しては、法律に基づく清算をする必要がありますが、事業者が消費者に対して請求できる金額の上限は特定商取引法および政令で定められているので、不当に高額な違約金となっていないか、注意しましょう。
・・・パート2へ続く