弁護士保険コラム Column

美容医療、エステ、結婚相談所…
高額契約でトラブルに遭わないために
知っておくべきこと②

美容医療、エステ、結婚相談所…高額契約でトラブルに遭わないために知っておくべきこと②

前回の記事(美容医療、塾、結婚相談所…「特定継続的役務提供」でトラブルに遭わないために知っておくべきこと①)で、特定商取引法の規制対象となる「特定継続的役務提供」がどのようなものか、対象となる7つのサービスについて、また消費者側の権利を確認しました。
今回は、事業者側の義務とその違反事例を通して、事業者の方は法令に則った対応ができているか、また消費者として利用する場合は、きちんとした事業者か見極めるポイントとして参考にしてみてください。

目次

  • 「特定継続的役務提供」における事業者側の義務
  • -1)書面の交付
  • -2)誇大広告等の禁止
  • -3)禁止行為
  • -4)書類の閲覧等
  • 事業者側の義務違反事例紹介
  • 「特定継続的役務提供」における事業者側の義務

    特定継続的役務を提供する事業者は、一例として以下の事項を遵守しなければならないと特定商取引法で定められています。違反をした場合、事業者には業務改善の指示、業務停止命令、役員等の業務禁止命令等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
    消費者の立場としては、サービス(役務)提供を受ける際、事業者が以下の事項を遵守しているか、気になったところは事業者に確認することをおすすめします。

    1)書面の交付

    事業者は、契約前に「取引の概要を記載した書面」を、契約後に「契約書面」を消費者に渡すことが義務付けられています。

    契約書に記載しなければならないことは、サービスの内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名、サービスの価格、金銭の支払時期、方法、サービスの提供期間、契約解除(クーリング・オフ)に関する事項、中途解約に関する事項などです。

    2)誇大広告等の禁止

    事業者は、著しく事実に相違する内容や、実際のものよりも著しく優良、有利であると誤解を与えるような広告、表示をしてはなりません。

    3)禁止行為

    以下のような、事業者における不実のことを消費者に告げる行為を禁じています。

    ・受けるサービスの種類や、受けたことによる効果を正しく伝えないこと
    ・サービスの提供を受ける人や権利の購入者が購入する必要のある商品についてその商品の種類、性能、品質を偽ることや、支払わなければならない金額を正確に伝えないこと

    4)書類の閲覧等

    事業者は「前払方式」で5万円を超える特定継続的役務の提供を行うときは、消費者が事業者の財務状況などを確認できるよう、その業務及び財産の状況を記載した書類(貸借対照表、損益計算書など)を事務所に備え置き、それを消費者の求めに応じて、閲覧できるようにしておくことが義務付けられています。

    事業者側の義務違反事例紹介

    消費者庁は、脱毛サロンを運営するG社に対し、特定商取引法違反により、業務の一部停止を命じました。あわせて、同社に対し、違反行為の是正等の指示をした事例を紹介します。

    前提の事象として、同社は、自社のスマートフォン向けサイト等に、月額9,500円の契約等により任意の月単位で全身脱毛の施術(以下、本件役務)の提供が受けられるかのような広告を行っていました。
    ところが、実際には17万円を超えるコース等の勧誘を行っており、9,500円は、契約代金を一括で支払った場合の1か月当たりの金額でした。
    さらに、同社は、店舗における施術機器数、施術部屋数、エステティシャンの人数等に対して会員数が過大であり、予約を取ることが困難な状況にありながら、「間違いなく予約が取れます。」等と不実のことを告げて特定継続的役務提供契約(以下、本件役務提供契約)を勧誘していました。

    同社の違反行為は、次のとおりです。

    ・同社は、本件役務提供契約を締結するまでに、本件役務提供契約の概要について記載した書面を交付していませんでした。(概要書面不交付)

    ・同社は、本件役務提供契約を締結した際、契約の相手方に交付する契約の内容を明らかにする書面に、本件役務の提供期間及び本件役務提供契約の締結を担当した者の氏名を記載していませんでした。
    (契約書面の記載不備)

    ・同社は、実際には、契約代金を一括で支払った場合の1か月当たりの対価が9,500円という計算になるにすぎないにもかかわらず、「月額制」、「通常月額9,500円」等と、単価9,500円の契約を任意の月単位で契約する制度であるかのような表示をし、さらに、「今なら初月+2ヶ月目も0円、2016年2月29日まで!」と、申込みの有効期限があるかのように表示していたが、実際には期限を過ぎても「2016年3月31日まで」、「2016年4月30日まで」と同様の表示を繰り返し、本件役務の対価並びに対価の支払時期及び方法について、実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示を行っていました。
    (虚偽誇大広告)

    ・同社は、予約制のエステティックサロンであるところ、多数の会員が予約が取れないにもかかわらず、「1か月に1回は必ず予約が取れます。」「うちは間違いなく予約が取れます。」、「予約はすぐに取れる完全予約制です。」等、予約の取りやすさをうたい、本件役務の魅力を判断する要素となる事項について不実を告げて勧誘していました。
    (役務の内容に関する不実告知)

    ・同社は、クーリング・オフをした消費者に対し、速やかに消費者から受領した金銭を返還する義務があるにもかかわらず、返金に際して「○○店に取りに来てください。」と告げるなど、債務の履行を不当に遅らせていました。また、中途解約をした消費者に対し、「解約してもお金は返せません。それは無理です。」と返金を拒否したり、「銀行のシステムのトラブルで、振込みが遅れてしまいました。」、「銀行に連絡がちゃんとされていませんでした。」と繰り返すなど、本件役務提供契約の解除によって生じる債務の全部又は一部の履行を不当に遅延させたりしていました。
    (解約した消費者への返金に関する債務不履行)

    ・同社は、原則として3か月に4回の頻度で施術を提供する債務を負っているにもかかわらず、上記債務の履行を不当に遅延させていました。
    (施術に関する債務履行の不当遅延)

    ・同社は、本件役務提供に係る前払取引を行っており、業務及び財産の状況を記載した書類を、事業年度ごとに当該事業年度経過後3か月以内に作成し、本件役務提供契約に関する業務を行う事務所に遅滞なく備え置かなければならないところ、店舗に当該書面を備え置いていませんでした。
    (財務内容の不開示)

    (引用元:消費者庁 News Release 平成28年8月24日/ http://www.jeia.gr.jp/etarabi_news.pdf)


    消費者は、サービス提供事業者が法令遵守しているかを知る判断材料の一つとして、事業者側の義務を知っておくに越したことはありません。また、サービスを受ける前に、説明を受け充分に理解した上で、サービス提供を受けるか決めましょう。万一、トラブルに遭ったときは、すぐに最寄りの消費生活センターなどに相談しましょう。

    監修弁護士

    齊藤 宏和 弁護士

    弁護士

    弁護士法人親和法律事務所 パートナー弁護士
    早稲田大学法学部卒業。関西学院法科大学院修了。
    中小企業の法務顧問を務めつつ、経営上の課題解決に対してもアドバイスを行う。
    特に、医療・介護特化の経営学修士を取得し、ヘルスケア分野に注力している。

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