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【事業者向け】売上にも影響? 企業を悩ます「カスハラ」とは何か?

【事業者向け】売上にも影響? 企業を悩ます「カスハラ」とは何か?

スーパーなどの小売店や飲食店で顧客が店側に理不尽なクレームをつける、「カスタマーハラスメント」が問題となっています。最近では、小売店などのサービス業だけでなく、市区役所などの公的機関や医療機関などにも不条理ともいえるクレームをつける人も少なくありません。ところでカスタマーハラスメントとはどのようなものなのでしょうか。

また、一般的なクレームとの違いはどこにあるのでしょうか。会社側として準備しておきたいこととあわせて確認していきましょう。

カスタマーハラスメントとは?

「カスタマーハラスメント」とは顧客からの悪質なクレームや理不尽な要求、嫌がらせを指す言葉です。2017年にUAゼンセンが販売・レジ業務・クレーム対応スタッフを対象に調査を行った結果によると、顧客からの悪質なクレームとして以下のようなものがあったことが報告されました。

悪質なクレームの内容 割合
暴言 27.5%
何度も同じ内容を繰り返すクレーム 16.3%
権威的(説教)態度 15.2%
威嚇・脅迫 14.8%
長時間拘束 11.1%

その他には「セクハラ行為」等の悪質行為も報告されています。さらに近ごろは「病院や介護施設で入院患者やその家族が職員に無理なお願いをする」「役所の窓口で不当な要求を行ったり暴力をふるったりする」といった事例もカスタマーハラスメントとして問題になっています。

カスタマーハラスメントの最大の問題点

カスタマーハラスメントの最も大きな問題といえば、従業員のメンタルに及ぼす悪影響です。前述したUAゼンセンのアンケートによると「悪質クレームを受けてどのような影響があったか」という問いには、53.2%もの人が「強いストレスを感じた」と回答しています。また、同質問では「精神疾患になったことがある」との回答も1.0%あります。

このように、「悪質なクレーム=カスタマーハラスメント」は、働く人にとって見逃せない大きな問題となっています。では、会社側は従業員をカスタマーハラスメントから守るために何をすべきでしょうか。詳しく見ていきましょう。

カスタマーハラスメントの効果的な対策について

正当なクレームを受けた場合、従業員だけでなく会社(経営者)も誠実に対応し改善に努める必要があります。例えば、小売店で数量限定商品を売り出す際に、顧客側に「数量が限られている」という情報を伝えておらず、購入できなかった人からクレームが来た場合はどうでしょうか。これは周知できなかった小売店側の落ち度にあたります。

「売り出し数量や販売開始時間をチラシ・店頭に明記しておく」「売り切れたらすぐに店頭にその旨を貼り出す」などの改善策を講じることができるでしょう。しかし、数量限定についての情報を事前に広く知らせており、店頭でも周知に努めているにもかかわらずクレームをしてくる場合は、不当・悪質なクレームです。このような不当・悪質なクレームは従業員を苦しめることになるため、会社は従業員を守らなければなりません。

会社には従業員に対する安全配慮義務があるため、カスタマーハラスメント対策を行っておく必要があります。例えば、悪質なクレームに遭遇する前に以下のような対策を行うことで、クレームを最小限に抑えることが期待できます。

● 従業員向けカスタマーハラスメント対応研修の実施

顧客のどのような行動がカスタマーハラスメントにあたるのか、不当な要求内容の把握方法、基本姿勢、悪質なクレームをする顧客への対応方法を研修で従業員に学んでもらうというものです。内部研修だけでなく外部からクレーム対応・顧客対応のプロを呼んで講習を受けてもらうのもよいでしょう。特に、実際に日常的にクレーム対応に当たっている弁護士の現場からの声は大いに参考になります。このような研修を受けた結果、従業員全体でカスタマーハラスメントへの共通認識を持ち、力を合わせて対応することができるようになるはずです。

問題を従業員一人で抱え込まずに全体で解決していくことが、カスタマーハラスメント減少への近道です。

● カスタマーハラスメントを相談できるところを作っておく

従業員向けの研修で対応を学んでおくことも大事だが、十分な対応をしたにも関わらずさらなるクレームをつけてくる顧客が出てくることも予想されます。そのときのために会社側として相談できる場所を作っておく必要があります。例えば、弁護士等の危機管理の専門家や警備会社との提携をしておけば顧客対応の相談や警備員派遣も依頼できます。クレーム対応はストレスの高い用務ですので、従業員がメンタルヘルスを害しかねません。そのようなことになると、会社が安全配慮義務違反を問われる懸念もあります。従業員を孤独にしないためにも専門家に気軽に相談できる窓口を設置しておくことが重要です。

法律の力でクレームを撃退しよう

カスタマーハラスメント対策として相談窓口を持っておくことはクレーム対策の基本ですが、クレームの予防やクレームの撃退には法律の力を駆使することがより効果的です。日常的にクレームと戦っている弁護士であれば、クレームに強い契約書や利用規約の作成、カスタマーハラスメント対応マニュアルの整備、警察への相談、悪質な顧客との直接交渉と、クレームの予防から撃退まで一気通貫した対応を依頼することができます。ぜひ法律の専門家である弁護士に協力を求めることをおすすめします。その際の費用が気になるところですが、カスタマーハラスメント専用のヘルプナビが付帯された弁護士保険に加入しておけば、相談回数や時間によっては無料で済む場合もあります。

「うちの会社は悪質な顧客はいないから大丈夫」「従業員がしっかりしているからどんなクレームが来ても大丈夫」と油断することなく、日ごろからクレーマーへの対策をしっかり立てておくことを検討すべき時代が来ています。

 

監修弁護士

野﨑 隆史 弁護士

弁護士

同志社大学法科大学院卒業
主な役職等
・京都弁護士会公害環境委員会 副委員長(2012.4~2018.3)
・京都府 総務部 政策法務課 法制担当 法務調査役(2012.4~2017.3)
・京都府 危険ドラッグの条例制定等に向けた検討会 委員(2014.8~11)
・京都府 公募型プロポーザル方式運用委員会 委員(2016.4~2017.3)
・鴨川府民会議 有識者メンバー(2016.4~現任)
・京都再エネコンシェルジュ認証制度検討委員会 委員(2016.7~現任)

主な取扱分野
中小企業法務全般、M&A、企業再生、クレーム対応、相続

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