新型コロナウイルスの影響に伴う失職や収入の減少などにより、家賃を払えない人が増えているそうです。
新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、こうした事例はさらに増えるものと考えられます。ここではコロナショックにより入居者が家賃を支払えない場合、オーナーはどう対処すべきなのかについて、考えていきましょう。
入居者から支払猶予の依頼を受けた場合の対処方法
入居者から支払猶予の依頼を受けた場合、オーナーはどのように対処すればよいのでしょうか。
借地借家法第32条では「土地や建物の価値が上下」「公的な目的のために負担する費用の上下」「経済事情の変化」などがあった場合は、契約の条件にかかわらず家賃の増減請求権を認めています。つまり特別な事情がある場合は、借主は貸主に家賃の減額などを請求できます。
もちろん支払猶予についても依頼できることになります。ただし家賃支払いの猶予や分割方法については規定がないため、貸主・借主で話し合って決めることが必要です。この際、少なくとも口約束で支払猶予をしてはいけません。なぜなら後でいつまでの猶予期間であったかを巡ってトラブルになる可能性があるからです。入居者から支払猶予の依頼を受けた場合には、合意書を作ることが必須となるでしょう。
作成する合意書には、「作成日」「借主・貸主両方の署名捺印」「新型コロナウイルスの影響による支払猶予である旨」を必ず記載しなければいけません。人によっては一度支払いを猶予するとその後も支払猶予を依頼してくるケースが考えられるため、「今回が特別である」ということを示す必要があるからです。
督促を行う際には注意しましょう
オーナー側のアクションについて見ていきましょう。新型コロナウイルスの影響で家賃の支払いがなかった場合、借主に督促を行うことはできます。ただし督促がきついと訴えられたり、SNSで拡散が行われたりするなど、状況が状況だけにバッシングが起きる可能性も考慮しなければなりません。また、最悪のケースとして裁判になったとしても、裁判所が新型コロナウイルスの影響を考慮する可能性はおおいにあります。
そのため、督促をする際には、大事にならないように注意をすることが必要です。
入居者に住居確保給付金の利用をすすめたほうがよい
新型コロナウイルスの影響で「家賃が支払えない」「支払えなくなる可能性が高い」といった人が増加していることから、政府も支援策を打ち出しています。それが「住居確保給付金」です。住居確保給付金とは、休業などに伴う収入の減少で家賃が払えない人に原則3ヵ月、最大9ヵ月の家賃相当額を自治体から家主に支給する制度です。
実は、住居確保給付金の制度自体2015年4月からありました。しかし、新型コロナウイルスの影響で支給要件が大幅に緩和されています。これまでは、離職・廃業から2年以内の人でハローワークへの求職申込みを行っている人が対象でした。つまり失業した人のみが適用される制度だったのです。
しかし、2020年4月20日以降は今までの要件に加えて休業などによって収入が減少した人も申請ができるようになりました。また、ハローワークへの求職申し込みも不要です。これにより失業していなくても住居確保給付金の制度が利用できるようになったため、対象者が大幅に増加しました。
入居者が家賃を支払えなくなった場合は、支払猶予や督促をする前に住居確保給付金の申請をするよう促したほうがトラブルになるケースが少なくなるでしょう。
ただし、新型コロナウイルスの影響で失業や収入が減少したすべての人が住居確保給付金の対象になるわけではないので、注意が必要です。一定の現金および預貯金があったり一定以上の収入があったりする場合は対象にならないこともあります。まずは、市区町村の担当窓口に相談することを入居者に伝えましょう。
個別の事案に対応するためにも、不動産オーナーこそ弁護士保険が必要
住居確保給付金は家賃を払えない人の多くに適用される見込みですが、すべての人が対象ではありません。支払猶予や督促など注意すべき点が多く個別の事案ごとに対応をしていく必要もあります。新型コロナウイルスの影響があり入居者からの相談が増えれば、オーナーだけで対応するのは簡単ではありません。
トラブルになってしまったときには早期に専門知識のある弁護士に対応を依頼したほうがいいでしょう。弁護士に対応を依頼するうえで便利なのが「弁護士保険」です。弁護士保険とは、毎月の保険料を支払うことで弁護士へ相談・依頼する際に必要となる弁護士費用を補償する保険のことです。弁護士費用といえば相談内容や業務量によりますが、着手金だけでも数十万円程度かかることも少なくありません。
弁護士保険に加入しておくことで、いざというときにお金のことを気にしないで弁護士に対応を依頼できます。グローバル化が進む現代において新型コロナウイルスのような疫病が流行することは、これからも十分に考えられます。個別事案の対応や手続きなどを考えると、不動産オーナーにこそ弁護士保険が必要ではないでしょうか。