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弁護士費用の相場は?離婚・相続・債務整理などケース別に紹介

弁護士費用の相場は?離婚・相続・債務整理などケース別に紹介

弁護士に相談したいと思っても、弁護士費用の相場がわからずに、依頼すべきかどうか悩む人も多いでしょう。今回は、弁護士費用の種類を解説し、離婚や債務整理、相続などの事案ごとに、弁護士費用の相場を紹介します。弁護士への依頼を検討している人は是非参考にしてください。

弁護士費用とは? 事務所によって違うので要注意

弁護士費用に関しては、日本弁護士連合会により「弁護士の報酬に関する規程」が定められています。とはいえ、この規程は弁護士費用の金額を示したものではありません。報酬に関する基準を作成して依頼者に明示すること、難易度や時間・労力・利益などをもとに適正な報酬を決定することなどの内容が定められています。

簡単にいえば、弁護士費用は、各弁護士事務所が自由に決めることができるが、事務所で作成した基準に基づいて弁護士費用を定め、依頼があれば弁護士費用の根拠を明示する必要があるということです。

弁護士費用は弁護士事務所によって違うことを十分承知したうえで、自分が依頼したいと思える弁護士事務所を探すことをおすすめします。

弁護士費用の種類は数多くある

続いて、弁護士費用の種類について解説します。必ずすべての費用が発生するわけではなく、利用したサービスによっていくつかの費用がかかることになります。詳細は、依頼した弁護士と取り交わす委任契約書で確認するべきでしょう。

法律相談料

法律相談料とは、弁護士に法律相談をしたときにかかる費用のことです。「30分で●●円」「1時間で××円」など、時間あたりの費用が決められていることが多く、また「1時間まで」といったように制限時間が設けられており、一律料金になっているケースもあります。

着手金

着手金とは、弁護士が依頼者の代理人として法的手続きを始める際に支払う費用のことです。依頼を受ければ、問題解決が成功するか不成功に終わるかにかかわらず、弁護士事務所側は人員を割くことになります。そのため、弁護士側の負担に対して支払う費用といえるでしょう。

報酬金

報酬金とは、問題が無事解決した際に支払う成功報酬のことです。不成功に終わった場合、報酬金を支払う必要はありません。なお、着手金は内金や手付金ではないため、報酬金から着手金が差し引かれるわけではありません。

日当

日当とは、弁護士が事務所所在地から移動する場合に、時間的拘束に対して支払う費用のことです。遠隔地の裁判所に出廷する場合や、調査等の目的で出張する場合などに、交通費などの実費とは別に発生します。

タイムチャージ

タイムチャージとは、弁護士の作業量に対してかかる費用です。専門性の高い複雑な契約書を作成する場合など、多くの時間がかかることが想定される場合によく発生します。

顧問料

顧問料とは、顧問契約を結んだ場合に毎月発生する費用のことです。会社や個人事業主などの事業者が、継続的な法律相談や契約書チェックなどを依頼するために、顧問契約を締結する場合の料金となります。

実費

交通費や宿泊費、収入印紙代などが当てはまります。こうした実費も忘れてはいけません。特に遠方への移動が伴う場合など、意外にも実費がかさんでしまうケースは少なくありません。保証金や鑑定料、コピー代、通信費などがかかることもあります。

弁護士費用の相場を事例で 知ろう

続いては、日本弁護士連合会が公表している、2008年に実施されたアンケート結果に基づき作成された「市民のための弁護士報酬ガイド」をもとに、弁護士費用の相場について解説していきます。割合は、金額を回答した弁護士事務所の割合を示しています。実際には、下記の各費用に消費税が加算されます。

法律相談

法律相談料:10,000円……56% 5,000円……36%

1時間10,000円程度が目安ですが、初回相談料を無料にしている弁護士事務所もあります。

離婚事案の場合

案件の概要

夫の暴力に耐えかねて、3歳児を引き取ったうえで離婚したいと考えている。慰謝料200万円が認められ、養育費を毎月3万円受け取ることになった。

<離婚調停>
着手金:20万円……45% 30万円……42%
報酬金:30万円……40% 20万円……30%

<調停不調で訴訟>
着手金:10万円……43% 0円……26%
報酬金:30万円……36% 20万円……20%

<訴訟から受任>
着手金:30万円……53% 20万円……26%
報酬金:30万円……37% 20万円……20%

最も多い回答を合計すると、調停のみで解決した場合は50万円、調停不調のあと訴訟で解決した場合は60万円(調停+訴訟になるので、調停の着手金20万円、訴訟の着手金10万円、報酬30万円) 、訴訟から依頼した場合も60万円ということになります。養育費を別にすると、勝ち取った慰謝料200万円のうち、25%~30%程度が弁護士費用の相場といえます。

債務整理・倒産

案件の概要

消費者金融など10社で総額400万円の負債をかかえており、債務整理を依頼した。

<過払い金回収>

取引履歴から計算すると、200万円の過払い金があることがわかり、全額回収した。

着手金:20万円……37% 10万円……34%
報酬金:40万円……35% 20万円……26%

最も多い回答を合計すると60万円ですので、回収した金額の約30%が弁護士費用の相場といえます。

案件の概要

<倒産(個人再生)>

300万円の負債が残ることがわかり、個人再生手続きによって、3年間で100万円を支払う再生計画が認可された。

着手金:30万円……47% 20万円……26%
報酬金:0円……51% 10万円……18%

案件の概要

<倒産(個人破産)>

自己破産を申し立て、免責が認められた。

着手金:30万円……49% 20万円……37%
報酬金:0円……66% 10万円……14%

欠陥住宅

案件の概要

新築住宅を2,000万円で購入したが、建物が傾く欠陥住宅だと判明した。補修費用、補修期間のレンタル住宅費用、引越し費用、慰謝料などを含め900万円を請求し、回収した。

着手金:50万円……50% 40万円……18% 30万円……18%
報酬金:90万円……37% 100万円……32%

最も多い回答を合計すると140万円ですので、回収した金額の約15%が弁護士費用の相場といえます。ただし、このケースでは別途鑑定料がかかる可能性があります。

遺産分割請求

案件の概要

夫が亡くなり、自宅不動産や預貯金、有価証券など総額1億円の財産が遺された。法定相続人は妻と子2人の3人で、遺言書はなかった。妻が遺産分割の調停申し立てを行い、法定相続分に該当する5,000万円に相当する遺産を取得することとなった。

着手金:50万円……41% 30万円……31%
報酬金:100円……31% 180万円……15%

最も多い回答を合計すると150万円ですので、このケースでは取得した遺産の3%が弁護士費用にあてられたことになります。ただし、他の相続人の了解が得られなかった場合や、財産の範囲に曖昧な点がある場合などは、追加の作業が発生し、弁護士費用の相場は高くなる可能性があります。

弁護士に依頼するメリットとは?

法的トラブルが起きた際に、自分で対処すべきか弁護士に依頼すべきか判断に迷うケースも多いだろう。ここでは、弁護士に依頼するメリットを改めて解説する。

精神的な負担の軽減

精神的な負担が軽減されるのは、弁護士に依頼する大きなメリットです。

法的トラブルに直面した場合、相手方がどう出るかを想像したり、見落としている点がないかを思いめぐらせたり、自分で思っている以上に精神的に消耗してしまうケースが少なくありません。精神的消耗の影響で、仕事に集中できなかったり、家族との関係性が悪化したりしてしまう可能性もあります。

弁護士に依頼すれば、弁護士が専門的な知識に基づいて対応してくれるため、先の見えない不安にさいなまれずにすみます。また、連絡は弁護士を介して行われるため、相手方からの電話や郵便におびえなくてよくなります。さらに、想定されるリスクについても弁護士が考慮したうえで、プロとしてアドバイスをしてくれるでしょう。

相手に与える印象

弁護士に依頼することで、相手が手のひらを返したように態度を変えるケースも少なくありません。弁護士に依頼することで、それまで無視を決め込んでいた相手から返事があったり、要求していた慰謝料が振り込まれたりすることすらあります。

身内や職場など近しい関係性だと、こちらが本気で要求していても、相手には甘えが生じていることも多く見受けられます。弁護士を通すことで、相手のそういった甘えを排除することができます。

弁護士に依頼すれば、相手方には弁護士から封書が届くことになります。家族と同居している場合、家族もただならぬ事態だと察するでしょう。相手に心理的プレッシャーをかけるという意味でも、弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。

トラブルの早期解決

法律の専門家である弁護士が間に入ることで、問題解決がスムーズに進む可能性が高くなります。

弁護士を通さずに自己判断で進めていると、対処法を誤ってしまうことも少なくありません。十分な証拠が集められなかったり、相手に証拠を隠滅されてしまったりする可能性もあります。

また、相手の挑発に乗って感情的になったときの音声を相手が録音していて、あとから相手が言い逃れをする材料を与えてしまうといったケースも考えられます。トラブル発生後に速やかに弁護士に相談すれば、適切な対処についてアドバイスを受けられるため、知らぬ間に墓穴を掘ってしまうことも防げるでしょう。

当人同士だけで問題解決を図ろうとしても、お互い感情的になってしまうことも少なくありません。こちらが冷静に話し合いを進めようとしても、相手が泣いたり怒鳴ったりして、らちが明かないこともあります。しかし、話し合いに第三者であり専門家でもある弁護士が同席することで、相手も冷静に話し合いに応じるようになります。

弁護士を通さずに半年から数年かけて争い、中途半端な結果になるよりは、弁護士を通して短期間で決着する方がよいでしょう。

最悪なケースの例として、当事者同士で交渉し、溝が深まってしまった結果、簡単な紛争が、解決困難な紛争になってしまう場合があります。当事者同士で交渉する場合でも、弁護士のアドバイスを受けながら、交渉し、溝が深まる前に、弁護士に前面にでてもらうことが良い場合もあります。

弁護士保険でトラブルに備える

弁護士に依頼したくても、弁護士費用がネックになって依頼できないという人もいるでしょう。離婚やパワハラ、隣人トラブルなど、身近なところに法的トラブルのリスクは潜んでいます。

最近では、法的トラブルに備えるため、弁護士保険に加入する人も増えてきています。弁護士保険は個人でも法人でも加入することができ、内容に応じてさまざまなプランがあります。弁護士保険に加入して保険料を負担しておけば、弁護士に依頼した際に保険金を受け取れるため、依頼のハードルも大きく下がるでしょう。

法的トラブルは突然自分や家族の身にふりかかってきます。いざというときに自分や家族を守るためにも、日頃から備えをしておくと安心です。

監修弁護士

藍原 義章 弁護士

弁護士

あけぼの綜合法律事務所 代表弁護士
第二東京弁護士会 所属

中小企業法務、離婚問題、遺言・相続問題を中心に、中小企業経営者、個人事業主の方、また多くの方が日常生活の上で直面するトラブルに幅広く対応

執筆として
青林書院『企業活動と民暴対策の法律相談』共著
現代人文社『季刊刑事弁護49号』刑事弁護日誌
関東弁護士連合会『ひまわり』11号
日本弁護士連合会『自由と正義』2008年5月

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