弁護士保険コラム Column

強要罪とは

強要罪とは

人に暴行、暴言を加え、無理やり義務のないことをさせる行為は、「強要罪」という罪に該当します。

強要罪と聞いても、あまりなじみのない犯罪名だと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。例えば、近時社会問題となっているカスタマーハラスメント問題において、店員に土下座を要求した悪質クレーマーが、実際に強要罪で逮捕された事例もあります。他には、例えば、女性に対して「お前の名前と住所をネット上でばらまくぞ」などと脅迫して「わいせつ画像」を送らせた場合においても、強要罪に該当する可能性があります。このように、強要罪は私たちの生活で日常的に起こりうる犯罪なのです。

第三者から無理やり義務のないことをさせられた場合に、法律的な知識を身につけておくことで、泣き寝入りすることなく、しかるべき対処ができるかもしれません。今回は、強要罪についてわかりやすく解説します。

1.強要罪とは

強要罪(刑法223条)は、①生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合(同条1項)、②親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合(同条2項)に成立します。つまり、脅迫又は暴行により、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したことが必要です。

例えば、殴る、蹴るなどの暴行や「殺すぞ」「会社をクビにするぞ」などの脅迫をし、他人に「土下座しろ」など義務のないことを命令したりする行為です。また、「契約書にサインしろ」「代金の請求をするな」というような権利行使を妨害する行為も強要罪に該当します。本人だけでなく、例えば「お前の母を殺す」など、その親族に対し害を加えることを告知して脅迫し人に義務のないことを行わせた場合も強要罪に該当します。

2.強要とは

強要とは、暴行又は脅迫という手段を用いて、人に義務のないことを行わせ、権利行使を妨害するという結果を発生させることをいいます。

「暴行」とは、他人を怖がらせて義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりすることができる程度のもの、すなわち、相手が何をするか自由に決めることをできなくし、相手が自由に行動することができなくなる程度のものをいいます。そのため、相手方の身体に対するものだけでなく、相手方に向けられていれば、物に対する暴行も「暴行」に含まれます。例えば机をバンバン叩くなどの行為も「暴行」に該当します。

「脅迫」とは、相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知することをいいます。告知の方法は、法文上制限はなく、文書による場合、口頭で告げる場合、態度で示す場合でも「脅迫」に該当します。例えば、凶器を示して「謝罪しろ」ということは、態度による脅迫ということができます。

3.強要罪の結果

強迫または暴行により、相手方の意思が抑圧され、それに基づいて、義務なきことの強制、権利行使の妨害が生じなければ、強要罪は既遂にはなりません。

暴行・脅迫がなされたものの、意思が抑圧されなかった場合には、義務のないことがなされ、権利行使がなされなかったとしても強要罪は既遂になりません。例えば、脅迫行為を行ったが相手方が恐怖心を抱かず、憐れみから要求に応じたような場合は未遂にあたります。

強要罪は、脅迫罪と異なり、未遂についても規定があるため(刑法223条2項)、 未遂であっても罰せられます。

4.他の罪との関係

職務強要、強制わいせつ、強制性交、逮捕監禁、威力業務妨害、強盗、恐喝については、これらの罪にあたる事実が強要罪にも該当する場合であっても、これらの罪のみが成立し、本罪は別個に成立しません。例えば、上司が部下に対して「体の関係を持たなければクビにするぞ」と脅かし、性的な関係を持った場合、強制性交罪のみが成立し、強要罪は成立しません。

5.強要罪と脅迫罪と恐喝罪の違い

「恐喝罪」は、人を恐喝して財物を交付させたときに成立する犯罪です。「恐喝」とは、相手が抵抗できないほどの暴行、脅迫とまではいえない程度の暴行、脅迫を用いて、お金など価値のあるものを渡すよう要求することをいいます。他方、「強要罪」とは、脅迫や暴行を加えて、人に義務のないことをさせ、または、権利の行使を妨害したときに成立する犯罪です。

このように、暴行や脅迫をつかって、相手の意思に反することをさせるという点では、恐喝罪も強要罪も同じといえます。

しかし、恐喝罪は「財物の交付」が必要となる点で、強要罪と異なります。

「脅迫罪」は、相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知したときに成立する犯罪です。そのため、害を加える告知をする点では、強要罪と脅迫罪は同じといえます。

しかし、脅迫罪は強要罪と異なり、未遂の規定がありません。また、脅迫罪は、脅迫をした時点で成立し、義務のない行為をさせること、権利の行使を妨害したことを要しません。

このように、強要罪と脅迫罪と恐喝罪は、相手に害を加える告知をする点では同じですが、以上のような違いがあるといえます。

6.強要罪の刑事責任

強要罪に該当した場合、具体的にはどのような罪に問われるのでしょうか。強要罪は、刑法に規定された罪なので、成立すれば刑事罰を受けることになります。強要罪の刑事罰は、3年以下の懲役であり、脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)と比べると、罰金刑がなく、刑期も長いことから、重い罪ということができます。

強要罪で逮捕・起訴され、執行猶予が付かなかった場合は、刑務所に行くことになります。

7.強要罪のケーススタディ

強要罪について知っていても、どのようなケースが罪に該当するのか、判断に迷う人は多いでしょう。続いては、強要罪に該当する具体的なケースを紹介します。

(1)ボーリング場で店員に土下座を強要した事例(大津地判平成27年3月18日)

27歳の男性が未成年の少女2人が滋賀県近江八幡市にあるボーリング店に来店し、同店において、アルバイト店員の接客態度が悪いとして因縁を付け、「土下座せえへんのやったら、店のもん壊したろか。」「めちゃくちゃにしたるで」などと怒鳴りつけ、土下座して謝罪することを要求し、同人に土下座して謝罪させた事件で、裁判所は「その犯行態様は、相手の人格や立場を顧みない執拗で悪質なものである」「被害者は、店内で土下座して謝罪するという屈辱的な対応を余儀なくされたものであり、犯罪結果にも軽視し難いものがある」とし、男性の前科を考慮して懲役8か月の実刑判決を言い渡しました。

(2)株主総会の議事進行を妨げた事例(東京地判昭和50年12月26日)

いわゆる総会屋5名が、株主総会において、議事妨害の手段として、Aを監査役に選任すること、株主総会を年1回とすることの議案に反対し、総会を年1回とする場合には、それに代わって株主懇談会を開催することを議事録に記載するよう執拗に要求しました。そして、A及び議長がこれらの要求に応じないときは、Aの名誉を著しく害する言動を続け、また引続き総会を混乱させ、流会に陥れかねない気勢を示し、よって、Aに要求に応じなければ引続き自己の名誉に対しどのような害を加えられるかわからないと畏怖させて、監査役選任候補を辞退する旨意思表示をさせました。加えて、議長に流会となることにより経営者としての名誉を害されるかもしれないと畏怖させ、右株主懇談会を開催する旨同総会議事録に記載させました。裁判所は、これらの行為について強要罪が成立すると判断し、実際に強要をした総会屋2人にそれぞれ懲役1年6ヶ月、8ヶ月の実刑判決を言い渡しました。

(3)しまむら勤務の店員に土下座を強要し、その状況を撮影した静止画をSNSにアップした事例

衣料品チェーン「しまむら」で、主婦が従業員に同店で購入したタオルケットに穴が空いていたことについて「タオルケットに穴が開いていた。返品のため費やした交通費と時間を返せ」などとクレームをつけて、土下座をさせました。さらに、この様子をスマートフォンで撮影し、「従業員の商品管理の悪さの為に客に損害を与えた」との文言を付してSNSにアップしました。この事件で主婦は強要罪で逮捕されました。

8.弁護士保険で法的トラブルに備えよう

義務なきことを強要され、しかるべき対処をしようと考えても、まずどこに相談していいか悩む人がほとんどでしょう。身内や知り合いなど信頼できる人に相談するとしても、 法律に詳しい人でないと解決することが難しいと思われますし、信頼できる人だからこそ話したくない、隠しておきたいということもあると思います。インターネットで犯罪を調べることもできますが、インターネットに載っている事例が、自分にも当てはまるのか判断するのが簡単でないときもあると思います。

こういった問題を解決するためにも、弁護士保険への加入が効果的です。弁護士保険に加入し、月々数千円の保険料を負担しておけば、トラブルが発生し弁護士費用が必要になった時、保険金を受け取ることができます。

また、弁護士保険には弁護士への無料相談がサービスとして付帯されています。トラブルが起きた時、信頼できる弁護士に速やかに相談できることは、大きな安心感につながるでしょう。

監修弁護士

香川 希理

弁護士

香川総合法律事務所 代表弁護士。
明治大学法学部、立教大学大学院法務研究科卒業後、2010年弁護士登録(東京弁護士会)、2013年香川総合法律事務所設立。企業法務を専門とし、上場企業から中小企業まで多種多様な企業の顧問をしている。主な役職としては、東京弁護士会マンション管理法律研究部、公益財団法人澤田経営道場企業法務講師など。主な著書としては「悪質クレーマー・反社会的勢力対応実務マニュアル」(民事法研究会)、「マンション管理の法律実務」(学陽書房)、「中小企業のための改正民法の使い方」(秀和システム)など。

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