振り込め詐欺は、特殊詐欺の代表例の一つです。特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面せずにあざむこうとし、指定した預貯金口座へ振り込ませるなどにより、不特定多数の人から現金等をだまし取る犯罪の総称です。
今回は、振り込め詐欺の類型、特徴と、被害にあわないために留意すべきこと、また被害にあったと気づいたときにとるべき対応を確認していきます。さらに、最近は振り込め詐欺の救済をかたる新手の詐欺も見られますので、その手口や相談先についても触れていきます。
振り込め詐欺の類型、特徴
振り込め詐欺の主な類型としては、1)オレオレ詐欺、2)架空請求詐欺、3)融資保証金詐欺、及び4)還付金等詐欺などがあります。
1)オレオレ詐欺
親族、警察官、弁護士を装うなどして電話をかけ、<会社における横領金の補填金>、<交通事故の示談金>といったさまざまな名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口によりだまし取る詐欺をいいます。
令和4年における特殊詐欺の総認知件数のうち、オレオレ詐欺は24.4%となっており、高い割合を占めています
2)架空請求詐欺
郵便、インターネットなどを利用して不特定多数の人に対し、架空の事実を口実に料金(金品)を請求する文書を送付するなどして、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口によりだまし取る詐欺をいいます。
令和4年における特殊詐欺の総認知件数のうち、架空請求詐欺は16.6%となっており、前年度から増加しています。
3)融資保証金詐欺
実際に融資をしないにも関わらず、融資をする旨の文書を送付するなどし、融資を申し込んできた人に対し、保証金などの名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口によりだまし取る詐欺をいいます。
4)還付金等詐欺
市区町村の職員をかたり、医療費の還付をする、税務署・社会保険事務所をかたり、税金の還付をするといった名目で必要な手続を装い、現金自動預払機(ATM)を操作させて口座間送金で現金を振り込ませる手口によりだまし取る詐欺をいいます。
令和4年における特殊詐欺の総認知件数のうち、還付金等詐欺は26.6%となっており、振り込め詐欺の中で最も高い割合となっています。
新手の振り込め詐欺(振り込め詐欺の救済をかたる詐欺)
振り込め詐欺の被害にあった人に対し、詐欺被害者サポートセンターなどをかたり、「被害金を取り戻すために必要」と称して現金自動預払機(ATM)に誘導し、更に振り込ませる詐欺(類型としては、上記の還付金等詐欺に該当。)も発生しています。
「振り込め詐欺救済法」に基づく被害者への返金制度は、預金保険機構と金融機関が行う「被害回復分配金の支払手続」のみですので、これに似た詐欺行為には注意が必要です。
詐欺の損害を取り戻すかのように見せかけた新たな詐欺をするのに「○○機構」等の公的機関を連想させる名称や実在する公的機関名で勧誘を行っているケースも散見されます。
さらに最近は、受取人に「相談窓口」として記載された先へ電話を促すような郵便物が郵送される事案もあります。「振り込め詐欺救済法」に基づく支払手続に関連して、被害者に対して金銭を要求することはありません。
被害にあわないために
振り込め詐欺の特徴として、「すぐに振り込まないと大変なことになる」とせかして考える時間を与えない、親族を装うなどもっともらしく言葉巧みに振込みを誘導してきます。
「すぐに振り込まない!一人で振り込まない!」ことが重要です。
<お金を振り込む>以外にも、<現金を郵送してほしい>、<コンビニでPOSAカードを購入してほしい>、<知り合いにお金を渡してほしい>と言われたときは、事実関係を確認してください。そして、身近な人、最寄りの交番・警察署、金融機関に相談してください。
また、詐欺の損害を取り戻すかのように見せかけ、公的機関名で勧誘などを受けた場合には、金融庁金融サービス利用者相談室、預金保険機構や最寄りの交番・警察署にご相談ください。
被害にあったと気づいたら
振り込め詐欺の被害にあった方の財産的被害の回復を図るため、「振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)」が平成20年6月に施行されました。
この法律により、被害者が警察と振込先の金融機関に連絡をすれば、その金融機関は被害者が振り込んだ口座を凍結(利用停止)します。被害者からの申請によりその被害額や凍結された口座の残高に応じて、被害額の全部または一部を被害回復分配金として被害者は支払いを受けられる可能性があります。
ただし、既に犯人がお金を引き出してしまったら、救済を受けられないので、被害にあったと気づいたら、直ちに警察と振込先の金融機関へ連絡をしてください。
なお、振込手続きによらない詐欺(直接人に渡した、ゆうパックなどに現金を同封して郵送してしまったなど)は、「振り込め詐欺救済法」の適用を受けられません。
自分は大丈夫だと思っていても、冷静さを失い、判断力が鈍った一瞬の隙を突いて、つけこまれる可能性があります。いかなる名目であれ金銭を要求してきた場合には、詐欺行為ではないかと疑い、最寄りの警察署に相談をするなどしてください。
◆参考
・金融庁HP「「振り込め詐欺」にはどのようなものがあるでしょうか・・・???」:https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/index.html
・警察庁HP「令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」:https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokushusagi_toukei2022.pdf
・警察庁HP「3 振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺」:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h24/honbun/html/o2130000.html
・金融庁HP「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」:https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/furikome/index.html
・金融庁HP「「振り込め詐欺救済法」に基づく被害者への返金制度を装った詐欺行為について」:https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/20130501.html
・政府広報オンライン「『振り込め詐欺救済法』に基づき振込んでしまったお金が返ってくる可能性があります」:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/2.html