いち個人が企業に関してSNSで写真、動画、メッセージを投稿したことにより、大きな影響を与えかねない時代になっています。企業内の悪習をリークするものや、アルバイトスタッフや顧客の立場でいたずらをするものなど、たびたび話題になることがあります。
メーカー、飲食店、小売業においては、買い控え、顧客離れ、上場企業においては株価が下がるなど、その影響度合いは計り知れないものとなっています。
今回は、自社に不利益な投稿がSNS上であった場合、どのような対応をとるべきか、見ていきます。
1.不利益な投稿への対応
SNSで、企業に不利益な投稿がなされた場合、それを見た人は、リポスト等、拡散をする、それにより多くの人の目に触れ、企業へ直接真偽の問い合わせをする、といった行動をとることがあります。
いずれにせよ、企業でそのような投稿を知ることとなった場合は、何らかの対応をとることが求められます。
2.自社に関するものではない場合(誤認のおそれがあるとき)
まずは、投稿された内容から、自社に関するものか、確認をします。
自社に関係すると見紛うものの、自社に関するものではないと判明した場合は、何らの対応をとらない、ということも考えられますが、意見表明をしないと、自社のものであると事実を認めているのではないか、という憶測を生みかねません。また、さらなる拡散や自社への問合せ対応の増加等も想定されますので、自社とは関係ない旨を公表することが望ましいと考えられます。
3.自社に関するものである場合(方針の検討)
(1)ネガティブな内容
ネガティブな内容がメディアに取り上げられるのは、企業としてのメリットは無いため、自社に関することで、ネガティブな内容であった場合、是正措置を早急に講じる必要があります。
(2)いたずら
アルバイトスタッフや顧客が店内でいたずら行為をした動画は、加害者(いたずらをした人)がいますので、SNSで拡散され、罪を償うべきだといった風潮になることが往々にしてあります。
そのような場合、企業のブランド毀損や企業価値・信用の低下を回復させるため、民事では、加害者に対し不法行為に基づく損害賠償請求等を行うことが考えられます。刑事では、SNSの内容に応じて、信用毀損(きそん)罪や業務妨害罪 、名誉毀損罪で被害届を提出したり刑事告訴をしたりすることが考えられます。
(3)外部からの意図的な不利益投稿
競合他社を陥れるための投稿も少なからず存在します。
悪意を持った相手の場合の対応として、当事者が明確であるときは、直接抗議文書を発送する方法があります。どの投稿内容が自社の名誉を害しているのか等を明記し、該当の投稿内容の削除、謝罪文の掲載等を要請することになります。
また、当事者が不明確なときは、SNSのガイドラインやポリシーに反しているようであれば、 当該SNSの運営会社に通報や連絡をし、削除対応をしてもらうこともあります。ガイドラインやポリシーに反しないものの、名誉を害するような投稿内容であれば、裁判手続きの仮処分の申し立てを行うのも一考です。
4.リリース(公表、対外的な状況報告)の仕方
取り得る方法として、①放置、②SNS等での短いコメント、③リリース文のホームページ上への掲載といったことが考えられます。
①放置する
軽微な内容で業績への影響が小さい、ほぼ無いと思われる場合など、手間のわりに効果が薄い場合などは放置することも考えられます。
放置をしていることで考えられるリスクは、前述のとおり、事実として認めているのでは、といった憶測を生みかねませんが、取るに足らないような内容にまで対応していては、キリがないので、些末と思われるものに関しては、特段の対応をとらないという選択肢もあります。
②SNS上の記載に、コメント(リプライ)をする
これは炎上を招く可能性がありあまり推奨できるものではありません。多少炎上することで商品認知が広がることが自社の利益につながる、といった明確なメリットが期待できない場合は、控えた方が良いでしょう。
SNSでリリースのような内容を公表することも考えられますが、短い文章では、誠実さや正確な内容が伝わりづらく、内容によっては一部分を切り取ったうえで、あげ足を取られ、さらなる炎上に繋がる、といった懸念も想定されます。
③リリースにより公表する
自社にホームページがある場合は、事実である旨、事実ではない旨、事実関係を確認中である旨の一報を出し、その後の方針等が決まり次第、スピーディーにリリースを出していくことが、世間的な広がりの早期収束に繋がると考えらえます。
5.エール少額短期保険から弁護士保険のご紹介
企業姿勢がより注目されやすい時代でもありますので、日ごろからリスク管理をしておくに越したことはありません。
苦情やSNSトラブルなど、対応方針の検討はもちろん、リリースの仕方も含め、誤った対応をすることで二次トラブルに繋がるおそれがありますので、弁護士に相談できる環境を事前に準備しておくと安心です。
事業者向け弁護士保険<コモンBiz+>の詳細はこちら