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【事業者向け】「経営危機発生リスク」チェックリスト

【事業者向け】「経営危機発生リスク」チェックリスト

事業者、特に中小企業にとって、経営危機となるようなリスクがどのくらい潜んでいるのか、チェックするためのリストを作成しました。自身の会社にどの程度の経営危機発生リスクがあるのか、確認してみましょう。

以下の質問に該当する場合、「はい」にチェックをつけてください。
最後にチェックした数をカウントし、現在の経営危機発生リスクを評価します。(所要時間:約15分)

【理念・行動規準の欠如による発生リスクをチェックしよう】


質問 回答
自社の経営理念を明確に定めていない。または定めているが、全取締役、監査役、従業員に浸透させていない。
経営理念から導かれる行動規準を定めていない。または定めているが、全取締役、監査役、従業員に浸透させていない。


【会社と株主・役員等との紛争発生リスク・内部統制リスクをチェックしよう】


質問 回答
株主総会を開催したことがない。開催していないのに議事録だけ作成したことがある。
株主総会の開催に際して、招集通知は出さないか、一部の株主にしか出していない。
取締役会を設置しているが、開催したことがない。開催していないのに議事録だけ作成したことがある。
株主総会や取締役会は開催しているが、議事録を作っていないか、極めて簡単なものしか作っていない。
取締役が複数名いるが、互いの業務執行を監視監督し合ったことがない。
取締役の中に、名前だけ借りて、実際には何の業務執行も行っていない者がいる。
取締役や監査役が改選されたのに、商業登記を変更していない。
取締役や監査役が退任して、定数を下回っているのに新任を定めていない。
監査役は名目的に置いているだけで、実際に会計監査してもらったことはない。
会社の定款は、設立時に巷で売っている書籍やネットの書式をほとんどそのまま写して使っている。
株主名簿を作成していない。または作成しているが株式譲渡をしても株主名簿の名義書換手続をしていない。
定款を紛失している、定款がどこにあるかわからない。
株券発行会社だが、株券を発行せずに株式譲渡を実行している。
株主総会の決議を経ずに役員報酬を支給している。
役員に対する貸付や役員との取引を、取締役会又は株主総会の決議を経ずに行っている。
一部の株主に金品を渡したり有利な機会を提供したことがある。
配当可能利益が出ていないのに株主に配当したことがある。
株主からの株式買い取り要求に対し、会社法上の要件を検討せずに応じたことがある。
子会社や業務委託契約先は別法人格だから監督する必要はないし、自社が責任を負うことはないと考えている。


【従業員との労働紛争発生リスクをチェックしよう】


質問 回答
雇用契約書は作成していない。
従業員採用時に、労働基準法が要求する項目を書面にて明示して説明していない。あるいは、待遇は採用後に働きぶりを見て決めれば良いと思っている。
採用募集広告に記載していた業務内容や待遇等と、採用後の現実のそれとに食い違いがある。
採用内定は正式な雇用契約ではないから、入社前であれば取り消して良いと思う。
試用期間を定めてあれば、試用期間中なら任意に正式採用を断って良いと考えている。
就業規則は作成していない。または作成しているが、作成時及び変更時に、労働基準監督署長に届け出ていない。
就業規則を変更する際に、従業員と十分に協議していない。
就業規則は、従業員がいつでも参照できるようになっていない。
従業員とは労働組合に加入しない約束をしている。労働組合に入ったことがわかったら辞めてもらおうと思っている。昇進や昇給に際し、従業員の労働組合への加入の有無を考慮している。
言うことを聞かない従業員や能力不足の従業員は解雇して良いと考えている。
残業代は支払っていない。または従業員が任意に残業してくれているのなら残業代は支払わなくて良いと思う。
労使協定の締結、36協定の届出をしていないが、従業員が残業をしている。
従業員の時間管理はタイムカードや出勤簿などによってきちんと行っていない。
残業代は基本給に含まれていると従業員に説明しているので、残業代の支払は行わなくてよいと考えている。
管理監督者なので残業代を支給していない社員がいるが、その中に出社退社時間の裁量がない者、部門の実質的な統括者でない者がいる。
管理監督者が深夜労働を行っても割増賃金を支払う必要はないと考えている。
従業員による有給休暇の取得申請にして、有休取得の理由が適切か否かを確認している。
多数の従業員が毎日残業している、有給休暇を取得する従業員が少ない、1ヶ月の残業時間が45時間を超えている従業員が多い、心身の不調により退職した従業員がいる等の状況があるのに対策は後回しになっている。
従業員の健康診断は本人に任せている。
配置転換は経営者が決めることだから、従業員には辞令を申し渡すだけで良いと思っている。
パワハラやセクハラの防止対策、及び、被害発生に備えての内部通報窓口の設置等の対応策ができていないか不十分である。
女性従業員が結婚したとき、あるいは妊娠がわかった段階で辞めてもらっている。または辞めてもらいたいと思っている。
従業員が退職するときは、会社に迷惑がかからない時期に退職すべきだ。あるいは、会社とよく話し合ってから退職すべきだと思う。
退職した従業員は、自社の定める競業禁止期間は当然に競業行為をしてはならないと考えている。
有期雇用契約者(非正社員)から無期雇用労働者に転換した社員に対応した就業規則となっていない。特例申請をしていない。
有期労働契約を締結しておけば、契約期間が満了すれば当然に辞めてもらえるものだと考えている。


【取引先との紛争発生リスクをチェックしよう】


質問 回答
取引先との間で契約書を作成せずに取引をすることがある。取引先から示された契約書の内容を十分に確認しないで契約を締結したことがある。
契約締結後に契約条件が変更されても口約束で済ませている。
契約書を作成するときは、巷の書籍やネットに載っている書式をコピーして、ほとんどそのまま使ってしまうことがある。
損害賠償、解除、危険負担、瑕疵担保責任について、契約書でどのように規定すれば自社に有利になるか分からない(例えば、取引先が倒産しそうなときにどのような条項にしておけば契約を解消できるのかわかっていない)。
取引先との間で、支払条件や代金額等について、一方的に不利な要求をされている。または要求している。
取引先との商品やサービスの購入契約を締結する際に、不要な商品やサービスを一緒に購入するよう要求されている。あるいは要求している。
暴力団関係者がいる取引先から不利な条件を突きつけられたことがある。


【売掛金等の未収発生リスクをチェックしよう】


質問 回答
取引開始前に相手方の経営状態をほとんど確認していない。
受発注の状況を帳簿やエクセル表等によって適時にきちんと管理していない。
入金予定日に入金がなされなかった際の対応マニュアルができていない。
内容証明郵便による督促、少額訴訟や支払督促のやり方を知らない。
取引先が倒産しかけたときや破産したときは、社長個人から回収すれば良いと考えている。
取引先が倒産したときは、取引先の会社に行って金目のものを持ってきて債権に充当してしまえば良いと考えている。


【消費者との商品・サービスに関する発生リスクをチェックしよう】


質問 回答
自社の商品やサービスを売る際には「売上No.1」「日本初」「短期間であっという間に効果」など少々誇大な広告をしても売り上げが増えるなら致し方ないと思う。
効果効能について客観的科学的根拠が不明確な部分があるのに商品やサービスの広告をして販売している。
顧客にアピールするため、販売している商品・サービスにおまけ等の景品を付けているが、顧客の利益にもなるのだから自由に行って良いと考えている。
特定商取引法やクーリングオフなどあまり気にせず販売している。
インターネットを利用して自社の商品やサービス提供を行っているが、その際の法律上の規制は特に意識していない。
消費者契約法が自分の会社の商売とどのような関係があるのかわからない。
認知症のお年寄りとの契約も署名捺印をしてもらえれば有効だと思っている。
当社の契約書には「商品やサービスにより事故が発生してもお客様の責任であり、当社は責任は一切負担致しません。」との記載があるので大丈夫だ。
当社が販売している商品取扱説明書には、安全性に関する注意書きが書いてないか、不十分だ。
自社の商品やサービスを営業する際に「絶対~する」「必ず~になる」等の断定的な言葉を使うことを許容しているなど、営業マンの監督体制が十分ではない。
自社が一方的に定めたキャンセル料や違約金を、顧客に対し当然に請求できると思っている。


【営業秘密・技術情報・知的財産権の流出または侵害リスクをチェックしよう】


質問 回答
顧客名簿を鍵のかからないキャビネットに入れているなど従業員が持ち出せる状態にある。あるいはPCでデータとして管理しているが従業員がアクセスできる状態にある。
営業上の秘密や技術上の秘密はあるが、秘密情報保護に関して、就業規則に規定はなく、従業員と秘密保持契約も締結していない。または、一応の規定はあるが何が秘密なのかを具体的に明確に特定していない。
取引先に営業上または技術上の秘密を提供する際に、秘密保持契約を締結していない。締結していても何が秘密なのかを具体的に明確に特定していない。
他社と製品やサービスの共同開発を行う際に、自社が守るべき技術やノウハウを明確に特定した契約を締結していない。
社内で秘密情報の取扱いについて研修を行うなどの注意喚起を行っていない。
個人のパソコンや記憶媒体を会社に持ち込んで使用している社員がいるが、それについて申請・許可等の規定を定めていない。
会社で使用するパソコンを廃棄又はリースバックする際に何らの処置・対応もしないまま廃棄又はリースバックしている。
退職時には、日本国内でライバル会社に就職したり、ライバル会社を立ち上げたりすることを誓約書を書かせて禁止している。これに違反した場合は損害賠償を請求できる。
就業規則や誓約書で、退職後も3年間は競業行為を行えないようにしているので安心だ。
ライバル会社に勝つため、同社から社員を引き抜いて営業秘密を入手したことがある。
販促活動を行う際に、他社のHPや折り込みチラシをほぼそのまま流用したことがある。
ライバル会社でよく売れている商品の形状を模倣したり、商品名を一部変えたりして商売したことがある。


【個人情報保護法違反等のリスクをチェックしよう】


質問 回答
顧客の個人情報取得に際して、個人情報利用の目的や利用範囲を明示していない。
従業員が、顧客名簿を自由に持ち出して営業をしている。
営業戦略として名簿業者から購入した顧客名簿を使用している。
コンピュータウイルスソフトは割高なので使用していない。
メールで添付ファイルを送る際、パスワードを設定することは面倒なので行っていない。
社員がツイッターやフェイスブック、インスタグラムを利用する際のリスクについて、社内教育を行っていない。
従業員やその家族のマイナンバーに関する取得・取扱規程を定めたり、技術的防護措置を講じたりなどしていない。


【環境法違反リスクをチェックしよう】


質問 回答
自社から排出される産業廃棄物の処理責任は、産業廃棄物処理業者の責任であって、自社には関係ないことだと思っている。あるいは、処理業者がきちんと処理しているかは、自社とは関係のないことだと思う。
廃棄物処理法を理解している担当者はいないし、廃棄物の処理に関するマニュアルもない。
自社の産業廃棄物について、産業廃棄物処理業者との間で委託契約書を作成しないで処理の委託をしたことがある。あるいは、処理の委託をしてしまった後に、産業廃棄物処理業者との間で委託契約書を作成したことがある。
産業廃棄物処理に際して、マニフェストを交付しないで産業廃棄物の処理を委託したことがある。あるいは処理の各過程についてマニフェストを確認しないことがある。
産業廃棄物処理業者と委託契約を締結する際には、処理業者に支払う金額は安ければ安いほど良いと思う。
産業廃棄物処理業者の方が、当社に対してお金を払って不要な物を引き取ってくれているケースでは、有価である以上、常に廃棄物処理法の適用はないと考えている。
自社から出される騒音・振動・臭気・汚水など事業において排出される有害物質が法令等の基準内に抑制されているか常時チェックしていない。


現在 

採点結果と評価

チェックの数 評価
0個 リスクゼロ!完璧です!
1~10個 コンプライアンスを意識した経営をされていて素晴らしいです。ただし、数個であってもリスクはリスクです。リスクが顕在化してしまったら企業価値の低下を招きますから、早急に弁護士に相談して完璧な会社にしてしまいましょう!
11~30個 ある程度のコンプライアンスは遵守されていると言えますが、相当程度のリスクが内在しています。一つでもリスク要因を減らすべく、弁護士に相談してできるものから順次取り組んでいくことが大事です。
30個超 重大なリスクを内包しています。大至急弁護士に相談して、優先順位を決めて、短期・中期目標を定めて対策を打つべきです。猶予は許されません!


監修弁護士

湊 信明 弁護士

弁護士

湊総合法律事務所 所長弁護士
東京弁護士会所属

主な経歴
1987年 中央大学法学部法律学科卒業
2003年 湊総合法律事務所開設
2013年 東京弁護士会 弁護士業務妨害対策特別委員会委員長
2015年 東京弁護士会 副会長
     関東弁護士会連合会 常務理事
2017年 東京弁護士会 中小企業法律支援センター本部長代行
2020年 日本弁護士連合会 弁護士業務妨害対策委員会委員長
2021年 東京弁護士会 中小企業法律支援センター SDGs プロジェクトチーム座長

主な著書
勝利する企業法務~実践的弁護士活用法(第一法規)
伸びる中堅・中小企業のためのCSR活用法(第一法規)
事例で学ぶ 生前贈与の法務リスクと税務リスク(大蔵財務協会)
従業員をめぐる転職・退職トラブルの法務(中央経済社)
成功へと導く ヒューマンライツ経営(日本経済新聞)

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