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少額訴訟で解決できる?よくあるケースや費用、手続きの流れを解説

少額訴訟で解決できる?よくあるケースや費用、手続きの流れを解説

金銭トラブルが起きた時、解決策として検討したい少額訴訟。今回は、少額訴訟の意味や活用場面、メリットを解説します。費用や手続きの流れについても説明しますので、金銭トラブルで悩んでいる人や、少額訴訟を検討中の人はぜひ参考にしてください。

少額訴訟とは?どんな時に利用できるの?

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる特別な訴訟手続きです。1回の期日で審理が終わることから、通常の訴訟より短期間で問題解決を図ることができます。

少額訴訟では、まず訴訟を起こした原告側が金銭の支払いを要求します。その後、訴訟を起こされた被告側がこれに対する主張を述べます。最終的に、証拠や証人等を調べたうえで、裁判官が判決を言い渡します。

支払義務があるという判決を裁判官が下した場合も、分割払いが認められたり、支払猶予期間が設けられたりすることもあります。また、通常の訴訟と同様に、訴訟の最中に和解が成立する場合もあります。

金銭トラブルとはやっかいなものです。貸した側からすると、貸した金銭が返ってこないのはゆゆしき事態です。家計や事業用資金への現実的な負担に加え、精神的にも負担がかかります。相手に催促することにストレスを感じたり、相手の状況によっては罪悪感を覚えたりすることもあります。

一方で、借りた側は深刻にとらえていないというケースも少なくありません。「借りているだけだから」「いつか正式に返すから」「もう少し待ってくれるだろう」と甘く考えている人もいます。

少額訴訟を活用することで、こういった問題を白黒ハッキリさせることができ、ストレスから解放されるでしょう。

少額訴訟を活用する2つのメリット

続いて、少額訴訟を活用するメリットを2つ紹介します。

● 支払いに応じない時は財産の差し押さえができる

まず、訴訟をしなかった場合と比較した少額訴訟のメリットは、金銭を回収できる可能性が高まる点です。

少額訴訟で裁判官による判決が出たにもかかわらず、相手が支払いに応じない場合、少額訴訟債権執行という手続きで、財産を差し押さえることができます。少額訴訟債権執行で差し押さえできる財産は、次の通りです。

  • 相手方名義の預貯金
  • 雇い主から相手が受け取る給料
  • 所有不動産の入居者から相手が受け取る家賃収入

一般的に、財産の差し押さえは強制執行と呼ばれています。強制執行で差し押さえる財産は、預貯金や給料だけでなく、不動産や自動車、貴金属など多岐にわたります。

しかし、強制執行の手続きは複雑で、手間がかかります。そのため、少額訴訟においては、簡単に手続きができる少額訴訟債権執行という制度が設けられています。

少額訴訟債権執行でどの財産を差し押さえるかは、基本的に申立人(支払いを請求する側)が決めることができます。ただし、相手にどのような財産があるかは、申立人が調査して突き止めなければいけません。

● スピード解決をはかれる

通常の訴訟と比べた場合の少額訴訟のメリットは、早期に問題を解決できる点です。少額訴訟では、1回の期日で審理が終了し、即日判決が言い渡されます。そのため、スピード解決をはかりたい人にとって、少額訴訟を活用するメリットは大きいといえます。

一方で、こちらが少額訴訟を起こしても、相手が通常の裁判を希望した場合、通常の裁判が必要になります。そのため、よく検討したうえで少額訴訟を活用するようにした方がいいでしょう。


少額訴訟が利用されるよくあるケースを紹介

続いて、少額訴訟がよく利用されるケースを紹介します。少額訴訟を利用しようか迷っている人は、参考にしてください。

● 個人間の金銭の貸し借り

身内や友人に頼まれてお金を貸したものの、いっこうに返してくれる気配がない… こういったケースでは、相手に返済を頼んでも、うやむやにされてしまうケースがあります。親しい間柄だと特に、甘えが生じやすくなります。

こんな時、強く返済を迫っても、相手にその気がなければお金を回収することはできません。しかし、少額訴訟を利用することで、すぐにトラブルが解決することがあります。第三者の目が入ることで、相手も冷静になり、自分の行いを客観的に振り返れるようになるからです。

● 敷金の返還請求

敷金は入居時にオーナーに預けるお金であり、本来は返還されるものです。それにもかかわらず、何かと理由をつけられ、敷金を返金してもらえないというケースがあります。

引っ越しの時は他にも色々とやることがあるため、あわただしく過ごしているうちにうやむやになってしまうこともあるでしょう。しかし、敷金の返還を受けることは、入居者に約束された権利です。すぐに返還してもらえない時、少額訴訟を利用すればあっさり返還されることがあります。

敷金は数十万円といったまとまった金額であることも多いため、面倒だと対応を後回しにせず、断固とした態度をとることが大切です。

● 未払い給与の請求

給料を毎月決められた日に、雇用契約に従って支払うことは、雇い主の義務です。しかし、「経営が厳しいから」「資金繰りが改善したら」と雇い主が言い訳をして、給与が振り込まれないというトラブルも発生しています。

雇用者の立場で、雇い主に対して堂々と未払い給与を請求することは容易ではありません。しかし、放置しておくと、結局未払いのまま倒産してしまうといった最悪の事態にもなりかねません。少額訴訟を活用してしっかり権利を主張すれば、法律に則って給与が支払われるはずです。

● 商品代金の未払いの請求

事業者同士でも、事業者対個人でも起こりうるのが、商品代金の未払いです。「来月払う」「今度払う」といった言葉をうのみにして待っていても、いっこうに代金が支払われません。

事業者側としては、頭の痛い問題です。決算期をまたげば、売上として計上する必要があり、代金を回収できないまま税金だけを負担しなければいけません。

こういったケースでも、少額訴訟を利用すれば、相手が支払いに応じてくれる可能性が高まるでしょう。もし拒否された場合も、判決が出ているなら、財産の差し押さえができます。


少額訴訟の手続きの流れは?

少額訴訟の手続きの流れは、次の通りです。

  1. STEP 01

    原告(訴えを起こす人)が訴状を作成し、証拠書類とともに裁判所に提出する
  2. STEP 02

    裁判所は訴状と証拠書類を審査し、被告(訴えを起こされた人)に訴状・期日呼出状・証拠書類を送付する
  3. STEP 03

    被告は訴状・期日呼出状・証拠書類を受け取り、答弁書を作成し、証拠書類を集める
    (この段階で、少額訴訟でよいか通常の訴訟手続きに移行するかの被告の意見が出てくる。被告が少額訴訟のままでよいならその まま少額訴訟で、通常訴訟に移行する意見が出れば通常訴訟に移行する)
  4. STEP 04

    被告が答弁書・証拠書類を裁判所に提出する
  5. STEP 05

    原告は裁判所から、答弁書・証拠書類を受け取る
  6. STEP 06

    原告・被告ともに期日までに、追加の証拠書類を準備したり、証人に連絡をとったりする
  7. STEP 07

    審理日当日、原告・被告・裁判官が丸いテーブル(ラウンドテーブル)に着席し、審理が始まる
  8. STEP 08

    原告、被告がそれぞれの主張を展開し、証拠を提出する
  9. STEP 09

    裁判官が双方の主張を聴いたうえで、争点を整理して判決を言い渡す
    (和解に至る場合もある)


少額訴訟にかかる費用

少額訴訟では、訴訟の目的とする金額に応じて、手数料が発生します。手数料は、収入印紙で納付します。

訴訟の目的とする金額 手数料
10万円まで 1,000円
20万円まで 2,000円
30万円まで 3,000円
40万円まで 4,000円
50万円まで 5,000円
60万円まで 6,000円

また、訴状の送付等で必要となる切手代を提出する必要があります。金額は裁判所や関係者の人数によって変動するが、数千円程度かかることが一般的です。


少額訴訟を弁護士に依頼するメリット

少額訴訟は、弁護士に依頼せずに自分で行うという人も少なくありません。一方で、専門家である弁護士へ依頼することには大きなメリットがあります。まず、少額訴訟を弁護士に依頼するメリットを紹介します。

● 少額訴訟で解決できるか専門家の判断を仰げる

トラブル内容によっては、そもそも少額訴訟を利用すべきではない場合もあります。専門知識がないまま少額訴訟を起こし、その後、通常の訴訟に移行すると、費用も時間もよけいにかかってしまうことになります。

しかし、専門家である弁護士に相談すれば、幅広い解決策の中から、最も合った解決策を提案してくれるでしょう。そもそも「少額訴訟で解決できるのか?」と悩んでいる人は、まず弁護士に相談してみるのもいいでしょう。

● 手続きの負担が減る

金銭は確実に回収したいが、忙しくて手続きに時間を割けないという人もいるでしょう。それならば、弁護士費用は必要経費と割り切って、専門家である弁護士の力を借りることも大切です。弁護士に依頼すれば、手間やストレスを最小限に抑えて、最も望ましい結果が得られるでしょう。


少額訴訟を弁護士に依頼するデメリット

少額訴訟を弁護士に依頼するメリットは大きいが、デメリットとなるのは、いうまでもなく弁護士費用が発生することです。弁護士費用は決して安くありません。少額訴訟で争う金額によっては、そもそも弁護士費用をペイできない可能性もあります。

弁護士に相談する際には、争う金額と弁護士費用の釣り合いを考えることも大切です。


弁護士費用を安くする2つの方法

最後に、弁護士費用を安く抑える方法を紹介します。

● 弁護士保険を活用する

まず、トラブルが起きる前から弁護士保険に加入しておくという方法があります。最近では、死亡やがん、介護といったリスクに生命保険で備えるのと同様に、法的トラブルに対しても弁護士保険で備えをする人が増えてきています。

金銭の貸し借りや代金の未回収、パワハラやいじめ、離婚や相続など、法的トラブルは意外と身近にたくさんあります。こういったトラブルに巻き込まれた時、弁護士保険に加入していれば、弁護士費用が支払えないからといって泣き寝入りしなくてすむでしょう。

また、弁護士保険の中には、弁護士に電話で直接相談できる無料サービスがついていることもあります。こういった無料サービスを活用することで、少額訴訟を利用するべきかどうかも含めて、専門家である弁護士のアドバイスを聞くことができます。

● 無料相談やインターネットの相談窓口を活用する

弁護士事務所の中には、初回は無料で相談に応じてくれるところもあります。また、インターネット上には、弁護士に無料相談できる掲示板もあります。こういったサービスを活用すれば、無料で弁護士の意見を聞けるでしょう。

ただし、あくまで「無料の範囲内」でのアドバイスしか受けられない点は注意が必要です。インターネットで相談する場合、情報は自分で精査する必要性があります。また、無料相談には時間制限があることも多いので、無料相談のつもりが途中から相談料がかかってしまったといったことがないよう注意する必要があります。


トラブルに合った解決方法を選ぶことが大切

少額訴訟は、少額な金銭の回収に特化した制度です。賢く活用すれば、トラブルを早期におさめ、ストレスから解放されることができます。一方で、弁護士に依頼するのか自分で手続きするのか、本当に少額訴訟での解決が可能なのか、悩ましいところでもあります。

トラブルに合った解決策を知るためにも、できれば一度弁護士に相談することをおすすめします。


監修弁護士

齊藤 宏和 弁護士

弁護士

弁護士法人親和法律事務所 パートナー弁護士
早稲田大学法学部卒業。関西学院法科大学院修了。
中小企業の法務顧問を務めつつ、経営上の課題解決に対してもアドバイスを行う。
特に、医療・介護特化の経営学修士を取得し、ヘルスケア分野に注力している。

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