社員の適材適所を見極めるため、定期的に配置転換を行っている企業は多くあります。
上半期が終了する9月にも配置転換を予定している企業もあるでしょう。
ただ、配置転換ではさまざまなトラブルが発生する可能性もあります。
例えば、
「職種が変わることを理由もなく拒否する社員がいる」
「異動のタイミングが悪すぎて部署からクレームが寄せられる」
などです。
そこで、いざというときに困らないように法律的にも問題ない配置転換の進め方について確認しておきましょう。
配置転換とは?
企業の配置転換とは、同一の組織内で職種や仕事内容が変更されることです。
混同されがちなものに転籍や昇進、昇格などがありますが、厳密に言うとこれらは配置転換にはあたりません。間違えないように気を付けておきましょう。
不当とみなされる配置転換とは?
配置転換が行われるのには、従業員に経験を積ませるため、組織の風通しを良くするためなどの理由があります。当然ですが不当な配置転換は許されるものではありません。
では、「どのようなものが不当とみなされるのか」をチェックしておきましょう。
従業員の不利益が大きい配置転換
「従業員が病気を患っていて今は職種を変えるのが困難」といった場合は、配置転換が不当とみなされることがあります。
また同居する家族が重い病気を患っているため家を離れられない従業員に転居を伴う配置転換を命じることも不当とされる場合があるため注意しましょう。
理由もなく給与が下がる配置転換
理由もなく給与が下がる配置転換も不当とされる可能性があります。職種が変わった場合でも一方的に給与を下げることは不可です。
しかし「職種によって給与体系が違う」という旨が制度で定められている場合は、この限りではありません。
仕事のうえでは必要ではない配置転換
通常、配置転換には「従業員の適材適所を見つけるため」などの理由があるものです。
しかし自主退職をさせたいがために閑職へ異動させるなど、仕事を円滑に進めるうえで必要がない配置転換は認められません。
配置転換の正しい進め方について
配置転換は通常「内示→辞令→配置転換」の順番で行われます。一つずつ詳しく見ていきましょう。
内示
内示から配置転換までの期間については、法的な決まりはありません。
しかし、引き継ぎや本人の準備などもあるでしょう。転居を伴わない配置転換の場合は2週間前、転居を伴う場合は1ヵ月前までに内示を行うのが一般的と言われています。
辞令
内示された配置転換を正式に伝えることが辞令です。内示で従業員に了解を得ていない状態であっても辞令を発令すること自体はできます。
配置転換
辞令後に配置転換を行い、新しい業務に就いてもらいます。
配置転換後もそのままにせず、成果が上げられそうか、従業員、部署ともに不満点・改善点はないかなどを確認するようにしましょう。
以上が配置転換の正しい進め方です。
しかし企業側が問題なく配置転換できると思っていても従業員側から思わぬ不満が出てくる場合もあります。考えられる不満やクレームについても見ていきましょう。
配置転換で考えられるクレームとは?
配置転換時に最も多いと考えられるクレームは、新しく配属される部署や業務への不満です。「事務方で働き続けたかったが営業へ移ることになった」など考えられる不満は多岐にわたるでしょう。
通常、配置転換時は内示、辞令の時点で従業員の同意を得ることが原則です。しかし同意を得られていなかったとしても就業規則に配置転換がある旨が明示されている場合は、配置転換が可能です。
そのため今一度、就業規則を確認してみましょう。
もし従業員が配置転換を拒否する場合、就業規則を元に正当性を主張することも可能です。
それでも従業員側が強く配置転換を拒否するならば企業側としては業務命令違反扱いにすることもできるでしょう。
ただしそこまですると企業と従業員の間でしこりを残すことにもなりかねません。
できるだけ粘り強く説得して納得してもらう道を探すことが望ましいでしょう。
なお従業員と個別に結ぶ労働契約にて職種等が限定されている場合は、配置転換ができないこともあります。
特に専門職で就業している従業員を他の職種に配置転換させたい場合は要注意です。この点はしっかり把握してから配置転換を考えるようにしましょう。
いざというときのために相談できる弁護士を探そう
就業規則で配置転換があることを定めていても拒否する従業員側とのトラブルが絶対に起こらないとは言い切れません。
そこで何かあったときのために相談できる弁護士を探しておくことをおすすめします。
現在の就業規則や規定に法的な問題点がないかチェックしてもらうだけでなく、
配置転換関連で従業員との間にトラブルが起こった際、間に入ってもらい解決の手助けをしてもらうこともできます。
なお弁護士に依頼、相談するときに費用がかかることは誰もが知るところです。
トラブルの内容によっては、解決までに時間を要しそれだけ費用もかかることが予想されます。
もし弁護士費用の負担が心配な場合は、弁護士費用を負担してくれる保険で備えておくという方法も選択肢の一つでしょう。ぜひ一度検討してみましょう。