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【事業者向け】中小企業にもパートタイム・有期雇用労働法に基づく説明義務が全面的に適用

【事業者向け】中小企業にもパートタイム・有期雇用労働法に基づく説明義務が全面的に適用

質 問

当社は,正社員のみに通勤手当を支給しています。パートタイム従業員から,なぜ通勤手当が支給されないのかについて説明を求められました。どうしたらいいのでしょうか。


回 答

パートタイム労働者をはじめとする非正規社員は,雇用者全体の4割弱を占めています。正社員と同じ仕事をしているのに,正社員と比べて,非正規社員は,給料が低い,手当がでない等の待遇差があることは多いと思います。

「同一労働同一賃金」について定めた(通称)パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が昨年4月1日に成立し,本年4月1日より全面施行され,中小企業にも適用されることとなりました。

どのようなことが事業主に求められるのでしょうか。大きく2つです。

事業主に求められること①

まず,①同じ企業で働く正社員と非正規社員との間で,基本給や賞与,手当などあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されています。

具体的には,均衡待遇(職務内容,職務内容・配置の変更範囲,その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止する)と,均等待遇(職務内容,職務内容・配置の変更範囲が同じ場合に差別的取扱いを禁止する)が定められています。

よって,正社員と非正規社員との間で待遇の相違がある場合には,その待遇(手当)の性質・目的を認定し,相違が不合理と認められるのかどうかが問題となります。

たとえば,転居を伴う配転が予定されている正社員に住宅手当を支給し,これが予定されていない契約社員に住宅手当を支給しないとしても,同手当が従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨であれば,その差は不合理とはいえないとなるでしょう。

一方,正社員には通勤手当を一律支給し,契約社員には一律支給しないとしていた場合,通勤手当の趣旨が通勤に要する交通費を補填するというものであれば,契約社員であっても通勤に要する費用が異なるものではないため,その差は不合理とされる可能性が高くなります。

事業主に求められること②

次に,②事業主は,非正規社員から,正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は,説明をしなければなりません。

この説明は義務です。また,説明を求めた労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁止されています。事業主の説明内容は後の裁判において重視されますのでご注意ください。

最後に

以上より,事業主としては,正社員と非正規社員の待遇に差があるのか,その待遇の性質・目的が何なのか,それを踏まえて待遇差は不合理とはいえないのかを再度チェックするとともに,必要があれば速やかに是正し,きちんと説明ができるようにしておく必要があります。

多くの裁判例がでており一義的に決まるものでもありませんので,リーガルオピニオンを得たうえでご対応いただければ幸いです。

監修弁護士

齊藤 宏和 弁護士

弁護士

弁護士法人親和法律事務所 パートナー弁護士
早稲田大学法学部卒業。関西学院法科大学院修了。
中小企業の法務顧問を務めつつ、経営上の課題解決に対してもアドバイスを行う。
特に、医療・介護特化の経営学修士を取得し、ヘルスケア分野に注力している。

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