弁護士保険コラム Column

【個人向け】不動産屋に支払った手付金

【個人向け】不動産屋に支払った手付金

とある相談者よりお寄せいただいたご質問について、その回答例をご紹介させていただきます。

質 問

引越をするために不動産屋をまわっていて、条件の良い物件が見つかりました。不動産屋から「人気物件なので、手付金として家賃の30%を支払って欲しい。その代わり今後は他の人には紹介しません」と言われたので支払いました。しかし、その後にさらに良い物件が見つかったので、そちらを借りることにしました。支払った手付金は返してもらえるのでしょうか。
 

回 答

この場合、手付金を返還してもらえるか否かは、支払った手付金の性質によります。
一口に手付金といっても、さまざまな種類があります。以下、代表的な手付について説明します。

  1. 証約手付
    契約締結の証拠として授受される手付のこと。この場合は、契約が成立しなかった場合には、原則として手付金の返還を請求できます。
  2. 違約手付
    手付を支払った側に債務不履行が発生した場合には、手付金が受取人側に没収され、受取人側に債務不履行が発生した場合には、手付を支払った側に手付金の倍額を償還すべきという意味で授受される手付のこと。この手付の性質については争いがありますが、返還請求者側に債務不履行が発生していなければ、手付の返還を請求できるとされています。
  3. 解約手付
    契約当事者に解除権を認める代わりに、手付を支払った側が契約を解除する場合には、手付金を放棄しなければならず、受取人側が契約を解除する場合には、手付の倍額を償還しなければならないという内容の手付のこと。この手付の場合には、本件では手付金の返還を請求できないことになります。

手付金が上記01から03のどの性質を有するかは、当事者双方の合意により決定されます。したがって、不動産屋との間で、証約手付或いは違約手付としてこの手付金を授受していたのであれば、手付金の返還を請求できます。逆に、不動産屋との間で、解約手付としてこの手付金を授受していたのであれば、手付金の返還を請求できないことになります。
 
ただ、手付金を授受する場合、その性質について当事者間で明確な合意がなされることは極めて稀です。本件でも、当事者間で手付金を授受する際に明確な合意がなかったのではないでしょうか?
当事者間で手付の性質について明確な合意をせずに手付金を交付した場合、その手付金がどのような性質を有するのかが問題になりますが、民法(557条)の規定から、当事者が別段の意思を表示しないで手付金を交付した場合、解約手付としての性質を持つと解釈されています。
したがって、本件で手付の性質について明確な合意をせずに手付金を交付した場合には、法律上は、手付金の返還を請求できないことになります。
 
ただ、これはあくまでも法律上の議論です。不動産屋によっては、返還してくれるところもあるかもしれません。とりあえず返還を請求をして、断られたら諦めればいいのではないでしょうか。

               

この記事の監修または執筆弁護士

伊東 芳生

弁護士

不二綜合法律事務所代表弁護士。神奈川県厚木市出身。
・1993年中央大学法学部卒
・大学卒業後、図書館職員を経て1999年司法試験合格
・2001年10月弁護士登録(東京弁護士会)
・鈴木諭法律事務所に入所
・2009年9月 不二綜合法律事務所を開業
主に大手損害保険株式会社の医療問題やモラルハザードを中心とした交渉案件や訴訟案件を担当。一般財団法人日本損害保険協会そんぽADR手続実施(紛争解決)委員

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